北大、観測ロケット「MASER14」打ち上げ――炭素質宇宙ダストの核生成過程を解明する微小重力実験を実施

北海道大学は2019年6月28日、スウェーデン宇宙公社の観測ロケット「MASER14」を用いて、炭素質宇宙ダストの核生成過程の解明のための微小重力実験を実施したと発表した。ロケットの弾道飛行による微小重力環境を利用して、高温のガスから炭素質宇宙ダストを模擬した微粒子が生成/成長する過程を直接測定し、生成条件と赤外線に対する特性の理解を目指した。

具体的には、屈折率変化を100万分の1以下の精度で捉えられる小型の2波長レーザー干渉計を作製し、ロケットに搭載して核生成時のガスの温度と濃度を同時に決定する。

測定方法の概略図

さらに、先行実験で利用された「浮遊ダスト赤外スペクトルその場測定装置」も搭載し、核生成過程の微粒子の赤外スペクトルも測定。実験の結果、表面自由エネルギーと付着確率を求めるために必要なデータの取得に成功した。

高温ガスが冷えていく際、多くの場合、炭素は一番初めに固体になると考えられており、炭化チタンのナノ粒子が炭素微粒子よりも先に生成する条件は非常に限られている。それゆえ、炭化チタンのナノ粒子を中心に含んだ炭素微粒子の生成過程は実証されていなかったが、同実験データは、炭化チタンのナノ粒子の生成過程の解明につながるという。

装置内で炭素とチタンの蒸気から宇宙ダストが生成する様子

炭化チタンのナノ粒子は、炭素が豊富な星の周囲で観測されている20.1μmの赤外線バンドの起源物質であるという2000年の研究報告に対する議論に決着をもたらすと注目される。

同研究成果は、宇宙における炭素質物質の生成や成長過程を同定し、宇宙史の中での物質進化の解明が飛躍的に進むと期待される。また、はやぶさ2が持ち帰る炭素質の宇宙ダストを含んだ試料の分析結果の理解にも役立つ。

研究グループらは、炭素よりも酸素が多い「酸素リッチ星」周囲で形成する宇宙ダストの核生成過程の解明に向けて、NASAの観測ロケットを用いた微小重力実験も予定している。

今後の実験により、星間物質進化のスタート地点である晩期型巨星で生成する炭素質と酸化物と両方の宇宙ダストの核生成過程の解明を目指すとしている。

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