材料にかかる応力を検出できるスマートポリマーを開発――引っ張るほど強く光る OIST

沖縄科学技術大学院大学(OIST)の研究者らは2020年1月23日、引っ張るほど強く光ることで材料にかかる応力を検出できる「スマート」ポリマーを開発したと発表した。ポリマーの性能測定、エンジニアリング、建設業界で使用する材料の小さな欠陥を調べることに役立つと考えられる。

スマートポリマーは、アクリル系塗料、接着剤、シーラントに使用される化学物質であるポリブチルアクリレートに、銅原子と有機(炭素含有)分子が結合してできた銅錯体を組み込むことで開発した。この銅錯体は紫外線にさらされると発光するが、ポリブチルアクリレート鎖に連結された銅錯体はより強く明るい光を発し、力が加わると構造が変化する化合物であるメカノフォアとして作用する。

これまで開発されてきたメカノフォアの多くは、有機化合物から作られており、化学結合の弱い箇所が応力によって切断される時に色が変化したり発光する。しかし、化学結合の切断メカニズムを利用するメカノフォアには、小さい応力には敏感ではない、結合を切断するプロセスは不可逆的であることが多い、といった厳しい制約がある。

今回開発された銅メカノフォアは、小さな応力に対して敏感で、迅速、可逆的に反応する。ポリマーを伸縮した時の発光強度の変化がCCDカメラで可視化したところ、発光強度が上がるほど赤くなった。

研究チームでは、この銅錯体のような発光化合物を研究しており、今回のポリマーを開発する以前にもさまざまな銅錯体を合成している。

左側の2つのポリマーフィルムには銅錯体が架橋剤として組み込まれている。右側の2つの容器には、元ポスドク研究者のプラドニヤ・パティル博士により開発された、銅錯体が入っている。これらのポリマーフィルムと単離した銅錯体は紫外線下で発光する

研究している銅錯体は、非常に動的で、形状が連続的に歪むことが明らかになり、サイズが大きい銅錯体は柔軟性が低下し、より明るい光を放つ。これは、分子の運動が低い柔軟性で制限され、熱としてのエネルギー損失が小さくなり、発光効率が上がるためだと考えている。今回開発した応力検出ポリマーは、この銅錯体の柔軟性と明るさの関係を利用している。

開発された銅錯体は、点線で囲った炭素鎖の部位がより大きくなるほど柔軟性が下がり、発光強度が増大する

今後、研究を続けることにより、わずかな応力変化を感知するアクリルポリマーの塗料を作ることができるようになると期待している。また、応力感知塗料により、応力のホットスポットが材料のどこにあるかを検出できるようになり、構造物の破損防止に役立つと考えられる。

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