高硬度、高耐摩耗性、耐食性に優れた炭化物強化マルテンサイト鋼を開発――課題の耐食性を銅の微量添加により克服 東北大学

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東北大学金属材料研究所は2019年8月27日、スーパーエンプラ製品の射出成形用材料として、高硬度、高耐摩耗性、耐食性を兼ね備える鉄鋼材料を開発したと発表した。炭化物強化マルテンサイト鋼の弱点だった耐食性を銅(Cu)の微量添加により克服し、既存材の2倍以上の耐久性を備えるスーパーエンプラ製造装置部材を実現したという。

スーパーエンプラ製品の製造方法の1つである射出成形は、樹脂の可塑化溶融時に腐食性ガスが生じるため、スクリュー・シリンダーなどの成形機部材の腐食が問題となっている。また、製品強度を向上するためのガラスフィラー(GF)などの硬質フィラーの添加量が増加傾向にあり、成形機部材の摩耗も深刻化している。

射出成形機部材には耐食性の良いステンレス鋼が使用されているが、耐摩耗性に課題がある。一方、高速度鋼(ハイス鋼)に代表される高硬度鋼は、微細な炭化物により強化されたマルテンサイト組織により耐摩耗性に優れているが、十分な耐食性が得られない。そのため、硬度・耐摩耗性と耐食性を両立した新材料の開発が強く求められていた。

そこで研究グループは、PPS(ポリフェニレンサルファイド)樹脂をターゲットに、PPS樹脂の可塑化溶融時に生ずる亜硫酸ガスによる腐食と、樹脂の強化のために添加されたGFによるアブレシブ摩耗とに対して、優れた耐久性を有する鉄鋼材料の開発に取り組んだ。具体的には、Cuを微量添加することで、ナノサイズの炭化物が多量に析出したマルテンサイト鋼の耐食性を改善し、耐摩耗性と耐食性の両立について検討した。

これにより開発したFe–16Cr–3W–1C–2Cu(mass%)合金は、オーステナイトが安定となる温度域から焼入れることでマルテンサイト組織を得られる。また、マルテンサイト組織の内部にはナノスケールの炭化物が微細かつ均一に形成するため、既存材と同等以上の高硬度の獲得も可能だ。

一方、開発合金の耐食性を評価するため、PPS樹脂の射出成形を模擬した硫酸水溶液中での浸漬試験を行なった。その結果、比較のために作製したCu無添加合金に比べ、Cuを添加した開発合金では1桁以上腐食速度が低く、焼入れ後も鋳造材と同等の優れた耐食性が維持されることが明らかになった。

さらに、研究グループはエイワや岩手大学と共同で、量産用の溶解炉・加工設備を用いて試作した開発合金からスクリューを作製し、GF-PPS樹脂射出成形の実機試験を行った。その結果、開発合金製のスクリューが既存のスクリューに比べて2倍以上の耐久性を有することを実証したという。

今回の研究成果は、耐食性と耐摩耗性を兼ね備えた鉄鋼材料の新たな材料設計指針として有用な知見で、射出成形機部材以外にも、化学・エネルギー分野で幅広い応用が期待されるという。

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