ほとんどが水で構成される低カロリーの“バター”が開発された。この研究は、コーネル大学の食品科学の教授のAlireza Abbaspourrad氏らによるもので、2019年6月27日に『ACS Applied Materials & Interfaces』に掲載された。
この研究では、バターの代替品を作り出すために、ごく少量の植物油と乳脂肪を使って大量の水を乳化する新しいプロセスを見出した。水と油を乳化すること自体は新しくないが、今回、高内相エマルション(high-internal phase emulsions: HIPE)技術を用いることで、最終組成が水80%、油20%の“バター”を作り出した。
一般的なバターは、水分が約16%、脂肪が約84%となっている。大さじ1杯当たり、脂肪が約11g、ほぼ100カロリーだ。それに対し、今回開発された“バター”は、大さじ1杯当たり、脂肪2.8g、25.2カロリーと、本物のバターの約4分の1のカロリーとなっている。
高内相エマルション(HIPE)とは、大量の分散相(内相)を持つ濃縮システムのことだ。分散相の体積を増加させていくと、徐々に分散滴間の距離が接近。球の最密充填の体積分率0.74を超えると、著しく粘性を増す。今回の研究で作り出された“バター”は、高い安定性を持つため、人工安定剤を使用せずに作ることができる。
また、水約80%、油約20%にもかかわらず、この“バター”は一般的なバターの口当たりとクリーミーさを備えている。さらに、「乳タンパク質や植物性タンパク質を追加する」「ビタミンを加える」「フレーバーを付ける」といったことも可能で、味や栄養成分を調節できる。
近年、消費者の健康意識が高まり、低脂肪・高タンパク質の食品に対する需要が急速に増している。今回作られた“バター”は、本物のバターと同じように感じられるため、消費者の健康を促進する一助になるのではないかと期待している。