定置用蓄電池(ESS)の世界市場、2025年の出荷容量は6万9892MWhと予測 矢野経済研究所

矢野経済研究所は2019年8月30日、2019年の定置用蓄電池(Energy Storage System、以下ESS)の世界市場の調査結果を発表した。

この調査は2019年4月から7月に、国内外のESS関連メーカーを対象に同社の専門研究員による直接面談取材と文献調査を併用して行ったものだ。調査結果によると、ESSは従来の停電など非常時に備えたバックアップ電源向けというイメージから脱却し、電力系統の周波数調整向けや再生可能エネルギーの導入拡大に伴う出力安定化対策向けなど、幅広いアプリケーションに採用が拡大し、本格的な立ち上がり期を迎えているという。

2018年のESS世界市場規模(メーカー出荷容量ベース)は、前年比265.5%の9909MWhであり、従来のバックアップ電源向けに加え、前述の再生可能エネルギーの導入拡大に伴う電力系統の安定化対策、電力の安定供給の実現などを目的とする需要が市場成長を牽引しているという。

平均すると電力料金は上昇する流れにあり、米国ではESSに貯蔵された余剰電力を電力卸売市場に接続させる動きがあるほか、日本では太陽光パネルの普及拡大を支えてきた「固定価格買取制度」(FIT)の買取期間が終了となるユーザーが2019年から出始めるなど、ESSの導入を促す方向へ外部環境が変化しつつあることが需要の拡大に繋がっていくとしている。

再生可能エネルギーの導入拡大に伴い、ESSへの需要は拡大傾向にあるものの、「電気を貯めて使う」ことで経済合理性が成り立つ構図は実際には描けておらず、依然として政策による補助金サポートがESS導入に大きく貢献している状況にあると指摘する。ただし、低炭素社会への移行に伴うESS市場の成長性を見込んだ世界有数プレーヤーの市場参入も相次いでおり、今後の電池生産量の増加やESS関連メーカー間の競合激化などによる電池のコストダウンなどにより、これまでESS導入において足かせとなっていた価格がさらに下落すれば、政策優遇による後押しがなくてもESSを導入する動きが活発化すると見ている。

将来の展望については、2020年以降、FIT買い取り価格の下落による余剰電力の自家消費を目的とする需要や、電力網の老巧化や人口密度の低い電力網インフラの拡充が困難な地域における電力の安定供給のための需要などが拡大することから、2025年のESS世界市場規模(メーカー出荷容量ベース)は6万9892MWhになると予測している。

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