低コストに二酸化炭素を液体燃料に変換する技術――効率的な水素燃料供給源としても有望

Photo by Jeff Fitlow

米ライス大学の研究チームは、固体電解質を利用して、二酸化炭素を高純度、高濃度のギ酸に変換できる電極触媒システムを発表した。従来より低エネルギー、低コストの方法で、約42%のエネルギー変換効率を達成した。再生可能エネルギーと組み合わせることで、効率的かつ環境にやさしい方法で二酸化炭素の削減が期待できる。研究成果は、2019年9月2日付けの『Nature Energy』で公開された。

ギ酸(HCOOH)は、水素を効率よく蓄えることができる優れたエネルギーキャリアだ。化学式からも分かるように、水素を取り出す際に排出される二酸化炭素も回収してギ酸として再利用可能で、循環型の液体燃料として期待できる。同体積の水素ガスと比べて約1000倍のエネルギーを蓄積できるため、水素燃料電池車向けの効率的な燃料供給プロセスにも一役買うことができる。

ギ酸の生成に二酸化炭素の還元反応を利用する場合、従来の還元プロセスでは導電性を高めるために、塩化ナトリウムや炭酸水素カリウムといった塩類が溶解した液体電解質を利用することが多い。この手法で生成したギ酸は溶解塩と混合しているため、脱塩プロセスが必要となりエネルギーとコストがかかるという短所がある。

研究チームは、塩類を使わない固体電解質と安定性の高い触媒を開発。固体電解質はポリマーベースで、プロトンを伝導するスルホン酸リガンドと、陰イオンを伝導するアミノ官能基でコートすることで塩類を不要とした。触媒には、銅、鉄やコバルトのような遷移金属よりも重く、触媒として安定な2次元ビスマスを採用した。また、ブルックヘブン国立研究所と協力して、様々な電位でのビスマスの酸化状態をX線吸収分光法から追跡し、二酸化炭素の還元中の触媒の活性状態を確認している。

開発した電極触媒システムは、触媒を劣化させることなく、連続100時間にわたり、二酸化炭素を純粋で高濃度のギ酸に変換できた。濃度は装置内の水流で調整可能で、流速を上げればより高濃度のギ酸が生成できるという。研究チームは触媒をkg単位で生産する方法も開発しており、産業としてスケールアップすることも容易だ。銅触媒を利用すれば、酢酸、エタノール、プロパノールなど、より価値の高い製品を生産できると、論文の筆頭著者であるChuan Xia氏は示唆する。

「二酸化炭素の削減は、環境にやさしい化学合成にだけではなく、地球温暖化への効果に対しても非常に重要だ。もし、電気が太陽や風といった再生可能エネルギーから作られるなら、我々は二酸化炭素を排出することなく、別の重要な資源へと転換するループを作成できる」とXia氏は、研究の意義を語る。

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