放物線のトリックを使い、磁気で記憶するメモリデバイスを考案

パーマロイ薄膜をリソグラフィーにより放物線形状に成形して、将来の革新的な情報記録素子に繋がる原理を実証した。

ドイツのヘルムホルツ協会のドレスデン-ローゼンドルフ研究所とベルリン研究所の研究チームが、軟磁性金属パーマロイを用いた放物線形状の薄膜を活用し、明確な磁気ヒステリシスを示す磁気デバイスを考案した。可逆的に磁化反転する磁区により、磁化の方向を符号としてビットに利用するもので、超高密度かつ低消費電力の高速メモリデバイスへの応用が期待される。研究成果が、2019年8月16日の『Physical Review Letters』誌に公開されている。

ハードディスクは、最も普及している情報記録装置であるが、ディスクを高速で回転させながらデータの読み書きをするために、大きな消費電力を必要とする。近年、磁性ワイヤ中を電流パルスにより磁区を高速で移動させ、磁区ビット形式のデータを効率的に移送できるレーストラック・メモリ技術など、低消費電力で大容量、高速なメモリ技術が研究されている。

研究チームは、革新的なメモリデバイスを求めて、カイラル磁気構造に注目した。カイラル構造は、乳酸分子に見られるように、同一化学式でありながら重ね合わせることができない鏡像異性体と類似した関係にある。カイラル構造の磁区は、数nmサイズであってもエネルギー的に安定であり、弱い外部磁場でも明確なヒステリシス挙動を示すと予測されている。

そこで研究チームは、一般的な磁性材料であるパーマロイ薄膜を使い、放物線曲面構造による形状効果を通じて、カイラル磁気構造を得ることにチャレンジした。リソグラフィーを利用して、パーマロイの薄膜から、長さ2μm、幅135nm、曲率半径約66nmの放物線形状を作成した。外部磁界を印加して、内部の磁気モーメントを磁界方向に沿って揃えた後、外部磁界を反転させて、内部の磁気モーメントの変化を測定したところ、明確なヒステリシス挙動を示した。

このヒステリシス挙動は、放物線形状の頂点領域における曲率によって、頂点に磁壁が生じることに起因している。「既存の一般的な軟磁性材料において、常温でカイラル特性を創出することに成功した」と、研究チームは語る。

このようなカイラル磁気構造を利用した磁気デバイスは、大きな技術的可能性を持っている。微弱な外部磁場でも応答を示すため、高感度な磁気センサや磁気スイッチ、非揮発性記憶デバイスなど、エネルギー効率の高い電子デバイスの開発に寄与すると期待される。

関連リンク

An astonishing parabola trick

関連記事

アーカイブ

fabcross
meitec
next
メルマガ登録
ページ上部へ戻る