極低温で強度を増すシルクの謎を解明――宇宙空間での利用も可能

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英オックスフォード大学と中国の研究チームは、ポリマー繊維の多くが冷却すると脆化するのに対して、天然のシルクは低温になるほど強度を増すことを発見した。シルク繊維のコアを形成するナノサイズのフィブリル(微小繊維)の高い配向性と比較的独立した構造が繊維の破壊を防ぎ、
-200℃にも耐えられるという。宇宙空間など極低温環境で使用可能な材料として期待できる。研究結果は、2019年10月3日付けの『Materials Chemistry Frontiers』で公開された。

シルクや骨、歯、真珠層、木材といった天然の材料は、強度と伸展性に優れ、並外れた機械的靭性を持っている。例えば、ゴムを含んだ合成ポリマーが-60℃で靭性を失うのに対し、蜘蛛の糸であるスパイダーシルクは、逆に強度と伸展性を増すことが分かっている。合成ポリマーの低靭性に関する研究はいくつかあるが、天然のシルクの低温下での靭性の背後にあるメカニズムは未だ解明されていない。

研究チームは、液体窒素を使って数種類の動物のシルクを-196℃まで冷却し、引張試験やSEM観察などからその振る舞いを調べた。サンプルには、スパイダーシルクも含まれたが、研究ではスパイダーシルクよりも繊維の太い、ヤママユガの一種サクサン(柞蚕)の繭から取れるシルクに焦点を当てた。

このシルクは-196℃の環境下では、降伏応力と破断応力のどちらも増加し、破断ひずみは30.7±3.5%と計測された。また、引張弾性率も、室温で14.5±0.8GPaに対し、-196℃では18.3±0.5GPaと増加、破断エネルギーは約2倍に増加していた。ヒステリシスを調べると室温でも極低温でも応力-ひずみ曲線の全体的な形状は変わらず、液体窒素中でも高い「弾性」を示していた。

中国上海の復旦大学のZhengzhong Shao教授は「極低温でのシルク繊維の並外れた機械的靭性は、高度に整列し配向がそろい、比較的独立した伸長性のナノフィブリル形態に由来する」と結論づけている。極低温では部分的に分子鎖が凍結し、亀裂の鈍化を誘発する。そして、フィブリルの滑りが可能になり、フィブリルが集まったフィブロインの効果的な展開を促進し、繊維全体の脆性破壊を防止もしくは遅延させるという。

シルクの持つ極低温下での延性と靭性は、地球の極地方、成層圏や中間圏、さらには宇宙空間で利用することができる。寒冷地仕様の衣類、軽量飛行機用の複合素材、宇宙ごみの回収ネットなど、幅広い利用を示唆している。

オックスフォード大学のFritz Vollrath教授も「我々はこの研究が、宇宙のように非常に寒冷な環境下でも使える、丈夫な構造をもったフィラメントや天然素材とシルク由来のフィラメントの複合素材を使った新しい製品の設計と製造につながると考えている」と、期待を込めている。

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