スクリーン印刷技術を活用して有機トランジスタ大規模集積回路を製造

Photo by THOR BALKHED

スウェーデンのリンショーピング大学は、2019年11月11日、同大の有機エレクトロニクス研究所(LOE)がResearch Institutes of Sweden(RISE)と共同で、100以上もの有機電気化学トランジスタから成る大規模集積回路(LSI)を印刷できることを実証したと発表した。研究成果はオンラインジャーナル『Nature Communications』に2019年11月7日付で発表されている。

この研究の特徴は、異なる製造方法を組み合わせる必要がなく、全てスクリーン印刷で行えることだという。「研究の鍵は異なるレイヤーをぴったりと正確な位置に配置することだ」とRISEのプリンテッドエレクトロニクス研究者であるPeter Andersson Ersman氏は説明する。

線幅100μmで電子回路を印刷するという課題の克服には、グラフィックス産業からヒントを得たという。研究者たちは非常に細い線を印刷できるメッシュを施したスクリーン印刷用フレームを開発した。さらに、必要とされる特性を備えたインクの開発にも多くの研究時間を費やしたようだ。

最初にスクリーン印刷を利用したプリント回路は2017年に実現されており、その研究成果はプリント回路分野におけるブレークスルーだったという。

2017年以降、少なくともさらなる3つの課題が取り組まれている。具体的には、回路サイズを縮小すること、回路内の全トランジスタの動作確率がほぼ100%になるように品質を向上させること、そして、信号処理と周囲との通信に必要とされるシリコンベースの回路との統合を達成することだ。

今回の研究における大きな進歩の1つは、プリント回路を使用して、従来のシリコンベースの電子部品とのインターフェースを作成できたことだ。研究者たちは有機電気化学トランジスタをベースとする複数のタイプのプリント回路を開発しており、特に、シフトレジスターの開発は注目に値する。シフトレジスターは、シリコンベースの回路とセンサーやディスプレーなどの電子部品とのインターフェースになり接点を制御するので、シリコンチップをより少ない接点で利用できるという。つまり、接点を少なくできるので、シリコンチップの面積を縮小できコストダウンにもつながるのだ。

「私たちは、現在、A4サイズのプラスチック基板に1000個以上の有機電気化学トランジスタを配置でき、それらをさまざまな方法で接続していろいろなタイプのプリント集積回路を作ることができます」とLOEの有機ナノエレクトロニクス研究責任者であるSimone Fabiano氏は説明する。

このようなLSIは、例えば、プリンテッドエレクトロニクスとして製造されているエレクトロクロミック(EC)ディスプレーや、IoTがもたらすオンライン電子デバイスなどに電力を提供するために使用できるだろう。

研究者たちが使用した材料はポリマー「PEDOT:PSS」。これは、有機エレクトロ二クス分野で最も研究されている材料で、17年前に市販されるようになったという。「この材料を選択したのは本当に幸運だった。現在、集積回路内でディスプレー内と同じ材料を使用しており、より効率的にプリントできるようになる」とLOEのMagnus Berggren教授は述べている。

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