1秒間に数百万回スイッチング――わずか1Vで動作する新しい光スイッチを開発

Image: Christian Haffner et al.

アメリカ国立標準技術研究所(NIST)とスイス連邦工科大学チューリッヒ校らの研究チームは、プラズモニクスを利用して、ナノサイズで、低損失、低電圧で動作する新しい光スイッチを開発した。自動運転車、ニューラルネットワーク、量子コンピューターなど、高速処理を必要とするアプリケーションでの利用を見込む。研究結果は、2019年11月15日付の『Science』に掲載されている。

近年、自動運転車は性能と信頼性を上げてきている。とはいえ、完全自動運転を実現するにはまだいくつか課題があり、特に、超高速で周囲の人々や障害物を認識するには、さらなる技術開発が求められている。

プラズモンと呼ばれる、光と金属中の自由電子の相互作用を利用した光スイッチは、その高速性からデータ転送やデータ処理に革命をもたらすと期待されている。しかしながら現状では高いスイッチング電圧を必要とし、デバイス中の光損失も大きいため、商業化には至っていない。

今回研究チームが新しく開発した光スイッチは円盤状で、シリコンと金の薄膜で酸化アルミニウムを挟んでギャップを形成したものだ。金薄膜のサイズは数μm、厚みはわずか40nmだ。

このスイッチを導波路のそばに置いて、光の進行を操作する。スイッチに印加すると静電気力により金薄膜が曲がり、ギャップが変化する。ある幅になると、一部の光がスイッチに入力し、金薄膜上の電子が振動し、光と電子の波のハイブリッド、つまりプラズモンが生成する。ギャップを変えることで位相を変え、もとの光と干渉して強め合ったり弱め合ったりすることで、光のオン・オフを切り替えたり、別の導波路へ導くこともできる。

実験では、1V以下で1秒間に数百万回スイッチングできることを確認した。さらに、損失はわずか2.5%に抑えられた。まだ試作段階とはいえ、従来の光スイッチの損失が60%であることと比べると、その性能の高さがわかる。

この技術の用途は多岐にわたる。光のビーム強度と方向の高速スイッチングは、自動運転車用LiDARの性能をさらに向上させる。人間の脳を模倣できる光ニューラルネットワークに利用すれば、高速で物体を認識できる。さらに、低温・低電力で動作する新しい光スイッチは、量子コンピューターの重要な要素として期待できる。

研究チームによれば、1秒間に200億回スイッチングすることもできるとし、今後は金薄膜とシリコンの間隔をさらに狭くして小型化することを計画している。これにより、光損失とスイッチング電圧の両方がますます低減し、産業界へ大きくアピールすることになるだろう。

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