再生可能エネルギーを水素として貯蔵できる安価な触媒を開発

Credit: CityU

香港城市大学(CityU)と英インペリアル・カレッジ・ロンドンの共同研究チームが、電気エネルギーを水素として貯蔵できる、白金単原子ベースの触媒を開発した。同研究成果は2023年9月13日、「Nature」誌に掲載された。

再生可能エネルギーを送電網に統合し、安定した電力を供給するためには、エネルギーの貯蔵技術が不可欠である。同技術は、風力エネルギーや太陽エネルギーの発電量変動に対応し、温室効果ガスの排出や化石燃料への依存を軽減するのに役立つ。

電気エネルギーの貯蔵法として、水分子を電気分解して水素に変換する方法が有力だ。同反応では通常、プロトン交換膜の両面に白金触媒を接着し、水分子を水素と酸素に電気分解する。白金は同反応に優れた触媒だが、高価で希少であるため、性能を維持したままできるだけ使用量を減らす必要がある。

共同研究チームは、今回、硫化モリブデン(MoS2)のシートに白金単原子を分散させる技術を開発した。同触媒は、既存の触媒よりも白金の使用量を大幅に削減でき、さらに白金がモリブデンと相互作用して反応効率が向上するため、電解性能も向上した。

CityUの研究チームは、ナノシート担体上に薄い触媒を成長させ、高純度の材料を作る技術の開発に成功した。さらに、インペリアル・カレッジ・ロンドンの研究チームは、触媒がどのように作用するかを決定する方法とモデルを開発した。

再生可能エネルギーをいったん水素として貯蔵できれば、次のステップとして、再び電気エネルギーに戻す、燃料電池が必要となる。燃料電池も通常、電気分解と同様プロトン交換膜と白金触媒を用いるが、インペリアル・カレッジ・ロンドンの研究チームは、白金ではなく鉄を使った単一原子の触媒を用いた燃料電池技術を開発し、2022年4月25日、「Nature Catalysis」誌に研究成果を発表した。

これらの技術革新は、水素エネルギーの利用技術を安価にし、実現可能にする。CityUのHua Zhang教授は、「電極触媒による水分解によって生成される水素は、近い将来、化石燃料に取って替わり、環境汚染や温室効果を削減する、最も有望なクリーンエネルギーのひとつになると考えられています」と説明した。

関連情報

Cheap and efficient catalyst could boost renewable energy storage | Imperial News | Imperial College London

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