- 2020-2-22
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- 3Dプリンティング, Ann & Robert H. Lurie Children’s Hospital of Chicago, Scientific Reports, ホルモン産生細胞, 人工卵巣, 卵子, 卵巣構造タンパク質
ヒト用人工卵巣の3Dプリンティングに向けて、ブタ卵巣の構造タンパク質の位置を同定し、マッピングしたという研究が発表された。この研究はAnn & Robert H. Lurie Children’s Hospital of Chicagoなどによるもので、成果は2019年12月27日、『Scientific Reports』誌に掲載された。
今回の研究は、小児がんを経験した後に治療の影響で早発閉経を起こしている若い女性患者に向けた、妊孕性とホルモン産生の回復に繋がるものだ。構造タンパク質からなる「インク」を使ってこの人工卵巣を3Dプリントし、インプラントすることで、早発閉経に対する治療法となる。
これまでの研究では、マウスの人工卵巣を3Dプリントし、不妊のマウスに移植して、妊娠、出産したという成果が出ている。今回のブタ卵巣の構造タンパク質は、ヒトのタンパク質と同じタイプであり、人間の治療に用いる人工卵巣を3Dプリントするための複雑なバイオインクを作るにあたって、有用な情報を得ることができる。
研究グループは、卵巣構造タンパク質を用いて、潜在的な卵子とホルモン産生細胞の貯蔵庫を支えられる生物学的足場を作ることを目指している。人工卵巣は、移植すると、排卵のための自然な刺激に反応し、妊娠が可能になるだろうという。
また、今回の研究は、臓器レベルで足場タンパク質を同定およびマッピングするためのパイプラインを初めて開発したものと言える。この方法論は、他の臓器を調べるのにも使用することができることから、他の臓器の微小環境についてのさらなる研究を促進することが期待される。