光透過率90%以上の完全表面結晶化ガラスファイバーを発表 東北大学

東北大学大学院工学研究科の藤原巧教授らは2023年7月12日、光ファイバーと同じ材料と形状を持ち、ファイバー型光制御デバイスへの応用が期待できる新材料「完全表面結晶化ガラスファイバー」を発表した。光学単結晶にも匹敵する90%以上の光透過率を達成している。

日本が目指す未来社会Society 5.0の実現に向け、光通信の高速化、大容量化が急務となっているが、今まで以上に制御および伝送の際に生じる光損失や雑音を減らす工夫が必要となっている。

一般的に光通信システムには、伝送を担う透明で非晶質のガラスのファイバーと、制御を担う結晶のデバイスが必要とされるが、ガラスと結晶という異種(異形態)材料の混在は、光損失や接続不整合性の要因となっている。これらのことがさらなる通信の高速化、大容量化を阻んでおり、伝送のための光ファイバー通信網と親和性が高く、一括化できるファイバー型の光制御デバイスの開発が望まれている。

研究グループでは、ケイ酸塩ガラスの熱処理によりストロンチウム(Sr)、チタン(Ti)、シリコン(Si)の複合酸化物であるSr2TiSi2O8結晶がガラス全体にわたって緻密かつ一方向に整列して析出する「完全表面結晶化ガラス」を開発しており、二次非線形光学効果の発現にも成功している。しかし、結晶化に伴う割れや空孔の発生が免れず、透明性の確保という課題が残っていた。

完全表面結晶化ガラスは、Sr2TiSi2O8結晶の組成に対し、TiO2とSiO2を過剰に加えた前駆体ガラスから得られる。Sr2TiSi2O8結晶が表面に形成された後、前駆体ガラス中の余剰となった成分は、Sr2TiSi2O8結晶ドメイン(領域)の内部と、ドメイン間にガラス状態で閉じ込められる。

今回の研究では、適切な熱処理で、特徴的な組織構造を制御し、割れや空孔が一切ない完全表面結晶化ガラスファイバーを創製した。また、余剰のガラス成分により、試料中心に生じるはずの空孔が補填される空孔抑制機構が明らかになった。

光通信波長1550nmでの光損失測定では、従来の透明セラミックス材料(1cm厚で80%未満の透過率)を凌駕し、光学単結晶級となる1cm厚で90%以上の透過率を達成した。

完全表面結晶化ガラスファイバーの光損失測定結果

完全表面結晶化ガラスファイバーは、結晶化熱処理のみで得られ、生産性に優れる。光の制御と伝送が光ファイバーに一括化された理想的な光通信システムの実現とともに、結晶化組織を生かした応用展開も期待される。

関連情報

光透過率90%以上の結晶化ガラスファイバー創製に成… | プレスリリース・研究成果 | 東北大学 -TOHOKU UNIVERSITY-

関連記事

アーカイブ

fabcross
meitec
next
メルマガ登録
ページ上部へ戻る