名古屋大学は2020年2月18日、従来のセンサーでは測定が困難な環境で水素濃度を高感度に測定できる新しい水素センシング素子を、同大大学院工学研究科の湯川宏氏助教と鈴木商館との共同研究グループが開発したことを発表した。
同素子は、濃淡電池式センサーの電極に、水素だけを選んで透過させる水素透過金属膜を活用。これにより、可燃性ガス中の水素や水蒸気を含む混合ガス中の水素のほか、酸性もしくはアルカリ性水溶液中の溶存水素など、さまざまな環境中で水素のみを検知できる。
実験では、水蒸気を含む混合ガス中での水素濃度の測定を実施。純水素と純窒素を用いて水素濃度が5~100%の範囲の混合ガスを作製し、60℃の蒸留水にバブリングさせ、その直後の混合ガスで水素センサーの特性を評価した。その結果、60℃での水蒸気分圧より、水蒸気を約20%含む混合ガス中でも、出力値は水素濃度の変化に追従して素早く応答することが分かった。
また、100%の水素ガスに暴露した後でも、出力値は暴露前の各濃度に素早く戻ることが明らかになった。これにより、高濃度水素の暴露による影響はほとんど見られず、水蒸気を含む高濃度水素の過酷環境下でも水素センサーとして動作することが確認された。
実験では、液体中の水素濃度の測定も実施し、溶存水素濃度に対応して水素センサーの出力値が変化することも確認した。特に、飽和水素水の溶存水素濃度(1.6ppm)の約5000分の1に相当する極めて希薄な濃度である0.3ppbでも敏感に反応することが分かった。また、安定して1.6ppmという高濃度でも測定できることが示された。
本研究成果は、工業、医療、農業など、水素がかかわるさまざまな分野での幅広い応用が期待できる。