- 2020-3-9
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- Hun-Gi Jung, KIST, Nano Letters, Si-C(シリコン―炭素)複合材料, エネルギー貯蔵システム(ESS), シリコン, トウモロコシ, バッテリー, 電気自動車(EV), 黒鉛(グラファイト)
韓国KISTは、従来のバッテリーに比べて容量が4倍でありながら、わずか5分で80%以上充電できるバッテリーを開発した。
電気自動車(EV)の航続距離は、バッテリーの容量制限によりガソリン車より短い。次世代のバッテリーには、電気自動車の航続距離を少なくとも2倍に伸ばすことが求められるとされ、蓄電容量を増加させる方法の一つとして、負極の材料として黒鉛(グラファイト)の代わりにシリコンを使うことが有望視されている。
シリコンは黒鉛に比べ蓄電容量が10倍もある。しかし、シリコンは充放電を繰り返すうちに体積が急速に膨張し、蓄電容量が大幅に低下するため、実用化は容易ではない。負極材としてシリコンを安定させるためにさまざまな解決策が提案されてきたが、どれも高価で複雑なものだった。
KISTのHun-Gi Jung博士率いる研究チームは、シリコンの安定性を高めるために、安価で容易に入手できる水、油、でんぷんに着目した。研究チームは、トウモロコシなどから取れるでんぷんを水で溶き、油とシリコンを混ぜてから加熱してSi-C(シリコン―炭素)複合材料を作製した。揚げ物を作る時と同じ簡単な熱処理で炭素とシリコンを固定し、充放電サイクル中にシリコン負極材が膨張することを防ぐことができたという。
研究者が開発した複合材料は、容量360mAh/g程度の黒鉛負極材に比べ4倍以上の高容量(1530mAh/g)で、500回以上のバッテリーサイクルで安定的に容量を維持できた。また、5分以内に容量の80%以上まで急速充電できる特性も示した。研究成果は、2019年12月11日付でアメリカ化学会(ACS)の科学ジャーナル『Nano Letters』に掲載されている。
Jung博士は「我々は、リアクターを使うことなく、日常生活で手に入る材料をただ混ぜて加熱処理するだけでSi-C複合材料を作製した。我々が採用したシンプルな方法や、我々が開発した優れた特性を持つ複合材料は、商用化したり大量生産したりできる可能性が大いにある。この複合材料は、電気自動車やエネルギー貯蔵システム(ESS)用のリチウムイオン電池に応用できるだろう」と述べている。
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