GPSを使わないナビゲーションの先駆けとなり得るデバイス――量子センサーの小型化と高耐久化に成功

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量子センサーを商用化できるほど小型で、エネルギー効率が高くかつ信頼性の高いデバイスが初めて開発された。将来的にはGPSに頼らないナビゲーションシステムが実用可能になるかもしれない。この研究は米サンディア国立研究所によるもので、2021年7月15日付で『AVS Quantum Science』に掲載された。

世界中に存在する数え切れないほど多くのデバイスが、GPSを使って目的地までの案内誘導をしている。それを可能にしているのは、極めて正確に時を刻む原子時計が衛星ネットワークと完全に同期させているからだ。しかし、GPS信号は妨害されたり偽装されたりすることがあり、そのせいで商用車や軍用車両のナビゲーションシステムが作動しなくなる事態が発生する可能性がある。

一方、量子センサーは成長中の分野であり、実験室で実証できている活用例はたくさんある。しかし、実用化にあたっては、センサーの小型化や高耐久化など、解決しなければならない問題が多くある。例えば、原子レベルの加速度計やジャイロスコープは既に存在しているが、航空機のナビゲーションシステムに使用するには、数千ボルトもの電力を必要とする大規模な真空システムが必要となるため、サイズがあまりにも大きくなり電力を大量に消費してしまう。

そこで、同研究所は、GPS衛星に頼らない将来のナビゲーションシステムのための中核技術として、真空ポンプの一種であるイオンポンプに依存しないチャンバー(容器)を開発した。アボカド程度の大きさのこの真空容器は、1年以上にわたり、正確なナビゲーション測定に適した状態で原子の雲を封じ込めてきた。ルビジウムガスの小さな雲にレーザー照射することで加速度や回転を測定し、原子時計と同じくらい正確な装置が可能になるとみられる。

従来は、電動真空ポンプが、内部に入り込んで測定を台無しにする分子を取り除く役割をしていた。それに対し、今回開発されたものは、「ゲッター」と呼ばれる1対の装置で、化学反応を利用して内部に入り込む分子を拘束する。ゲッターはそれぞれ鉛筆の消しゴム程度の大きさなので、チタン製容器から突き出た2本の細いチューブの中に押し込むことができ、電源がなくても作動する。

さらに汚染物質が入らないようにするため、同研究所の材料科学者らと協力して、研究チームはチタンとサファイアでチャンバーを作った。チタンやサファイアは、ステンレスやパイレックスガラスを通り抜けるヘリウムのような気体の遮断に特に優れている。このチャンバー作製には、核兵器部品に用いる最新の材料を接着するために同研究所がこれまでに洗練してきた高度な製造技術が必要だった。

こうして研究チームは、高出力の真空システムがなくても量子センシングが機能することを示した。これにより、信頼性を犠牲にすることなく、パッケージを実用的なサイズにまで縮小できる。

このチタン製チャンバーは何年も安定して作動しなければならない。研究チームはこのデバイスの観察を続けており、彼らの目標は、5年間、密閉された状態で動作させることだ。もしその目標が達成されれば、この技術が実用化に足るかを示す重要なマイルストーンとなる。研究チームは、それまでに製造を効率化する方法を探る予定だ。

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