カリウムイオンバッテリー用不燃性電解質を開発――次世代のエネルギー貯蔵システムに向けて

Credit: Angewandte Chemie

リチウム技術に代わる次世代エネルギー貯蔵システムに向けて、カリウムイオンバッテリー用不燃性電解質が開発された。この研究はオーストラリアのウーロンゴン大学などの研究チームによるもので、研究成果は2019年12月15日付で『Angewandte Chemie』誌に掲載されている。

現行のエネルギー貯蔵システムは、リチウムイオン技術を主体としたものが多いが、価格や環境問題、電解質の可燃性など本質的な欠点は解決されていない。コスト面では、リチウムイオンをカリウムイオンなどの安価なイオンに置き換える次世代技術が検討されているが、カリウムイオンバッテリーに適した不燃性電解質はまだなく、安全性の課題の解決には至っていない。

今回研究チームは、難燃性のリン酸塩をベースとする新しい電解質を開発し、カリウムバッテリーでの使用に適合させることを試みた。難燃剤として知られるリン酸トリエチルは、リチウムイオンバッテリーに利用された場合、長期間の使用に耐える十分な安定性を得るためには、産業用途としては高濃度が必要だとされていた。

ところが、このリン酸塩溶媒を一般に入手可能なカリウム塩と組み合わせて、電解質を作ったところ、この電解質は不燃性を保ちつつ、カリウムイオンが存在することで、1リットルあたり0.9〜2molの低濃度で安定的に作動することが分かった。

また、その性能の鍵は、均一で安定した固体電解質相間層の形成だということも分かった。従来の炭酸塩ベースの電解質はこの層を構築することができなかったが、リン酸塩電解質は単独でこれを実現できるうえ、炭酸塩ベースの電解質よりも高いサイクル安定性を示した。

今回リン酸塩ベースの電解質を用いることで、次世代カリウムイオンバッテリーを安全なものにできる可能性が実証されたといえる。大規模用途に適した低濃度での作動も可能になり、大規模なスマートグリッドの構築といった用途を可能にする、安価で優れた性能を保証する希釈電解質となる可能性がある。

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