有機薄膜太陽電池の実用化に貢献する新たな電子受容性材料を開発――エネルギー変換効率の向上 京都大学

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京都大学は2020年3月9日、これまで難しかった、高効率の太陽光吸収とそれによる励起状態の長時間持続を両立する有機薄膜太陽電池向け電子受容性材料を開発したと発表した。

同大学によると、有機薄膜太陽電池はシリコン太陽電池と比較して製造コストが安く軽量かつ柔軟性にも富むため、次世代の太陽電池として期待されている。また、高いエネルギー変換効率を達成でき、鉛を使用しないことから環境負荷が低いことでも注目されている。

有機薄膜太陽電池は、電子受容性材料と電子供与性材料から構成される複合膜によって発電し、エネルギー変換効率を向上させるためにはこれらの材料をどう設計するかが鍵となる。

エネルギー変換効率を高めるためには、電子受容性材料が効率よく太陽エネルギーを吸収する必要がある。そのためには、半導体材料におけるエネルギー準位の高低差であるバンドギャップを小さくする必要がある。しかし一般的にバンドギャップが小さい材料は太陽光エネルギーを吸収した励起状態が短くなってしまうという問題があった(エネルギーギャップ則)。従来のITICと呼ばれる電子受容性材料を用いた有機薄膜太陽電池では、このような問題を電子受容性材料と電子供与性材料をナノメートルレベルで細かく混合することで克服していた。

今回の研究では、ITICの比較的電子が豊富な部位に、ベンゼン環やピリジン環が二次元平面上につながった構造を組み込んだ電子受容性材料「TACIC」を設計、合成した。二次元平面構造部位は薄膜中で分子間相互作用を示す。これにより従来励起状態で発生していた振動や回転運動を制御し、励起状態の寿命を延ばす。TACIC膜はITIC膜と同程度の小さなバンドギャップであるにも関わらず、励起状態の寿命は50倍以上になる。

本研究で開発した非フラーレン型電子受容性材料TACICの構造

TACICを用いた有機薄膜太陽電池は9.92%の高いエネルギー変換効率を示した。本研究成果は、これまでエネルギーギャップ則により実現不可能と考えられてきた、小さなバンドギャップと長い励起状態寿命の両立をした電子受容性材料を、分子間相互作用を利用することで創出できるという、新たな分子設計指針を与えたといえる。

また、TACICによる有機薄膜太陽電池では、従来のように高度な技術が必要なナノメートルレベルの混合が必要なくなるために、有機薄膜太陽電池が作りやすくなるという。

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