EV普及のカギとなるリチウム金属電池の研究

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イオン液体電解液ILE(右側)によって、NiリッチのNCM88正極における構造的な損傷を顕著に抑制することができた。1000サイクル後も、電池容量は依然として88%を維持する。/Figure: Fanglin Wu and Dr. Matthias Künzel, KIT/HIU

カールスルーエ工科大学(KIT)のヘルム(HIU)ホルツ協会ウルム研究所の研究チームが、現行リチウムイオン電池と比較し、極めて高いエネルギー密度と優れた容量安定性を有するリチウム金属電池を実現する手法を考案した。正極材料に従来よりもニッケル(Ni)が富んだLiNi0.88Co0.09Mn0.03O2、また電解液に不揮発性で低可燃性のイオン液体を用いることにより、現行のリチウムイオン電池の2~3倍以上の、エネルギー密度560Wh/kgと容量214mA/gを達成し、充放電1000サイクル後においても88%の容量を維持できる。より長い走行距離が求められるEVの本格的な普及に向けて、高電圧大容量の次世代リチウム金属電池の開発に貢献できると期待される。研究成果が、『Joule』誌に2021年7月15日に公開されている。

リチウムイオン電池は、自動車業界においてカーボンニュートラル実現に向けて大きな役割を担うが、EVの本格的な普及に必要不可欠な走行距離の拡大に対して、エネルギー密度の面で限界に近付いている。次世代型リチウム電池として、負極活物質として黒鉛電極の代わりにリチウム金属やその合金を用いたリチウム金属電池は、理論容量が約10倍と極めて大きく、研究開発が進められている。

実用化に向けて、よく知られている課題は、充放電サイクルに従って負極にリチウム金属が樹枝状に析出成長し、セパレータを貫通して内部短絡を生じ、最悪発火に至ること。そして正極側においても遷移金属の陽イオンが液体電解質内に溶出するため、充放電サイクルに伴って正極の膨張収縮が生じ割れを発生する現象などがある。

研究チームは、このようなリチウム金属電池の問題点を解決するため、正極材料として従来から提案されてきたものよりもコバルト(Co)が少なくNiが富んだLiNi0.88Co0.09Mn0.03O2(NCM88)を用いるとともに、従来の有機電解液(LP30)の代わりに2つのビスイミド、FSIとTFSIを導入した不揮発性で低可燃性のイオン液体電解液(ILE)を用いることを試みた。LP30電解液を用いる場合、正極材料を構成する粒子に亀裂が生じ、この亀裂の中で電解液が反応して正極構造を損傷するとともに、負極ではリチウムを含む苔状析出が形成されるのに対し、ILEを用いると正極における構造的な損傷および負極における苔状析出を顕著に抑制することが判った。

その結果、電池としてのエネルギー密度は、従来のリチウムイオン電池の2倍以上の560Wh/kgを達成するとともに、初期容量は214mA/gであり1000サイクルの充放電後も88%の容量を維持した。平均クーロン効率、すなわち充電電気量に対する放電容量の割合は99.94%である。「高い安全性も確保されているので、EVの普及など、カーボンニュートラルに向けて重要な一歩だ」と、研究チームは実用化に向けて期待をみせている。

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