東洋紡は2020年3月23日、世界最高レベルの変換効率の有機薄膜太陽電池(OPV)用材料の実用化に向けた試作に成功したと発表した。
OPVは、炭素や硫黄原子などを含む有機物の発電材料を溶媒に溶かして、電極を持つガラスやプラスチック基板上に塗布するなどの方法で作製される太陽電池である。同社によると、軽くて薄い形状にできるので、現在主流の無機太陽電池が設置困難な壁面や布地などへの貼付ができ、IoTにおけるセンサやウェアラブルデバイスのワイヤレス電源としての普及が期待されている。
同社は2019年6月から、フランス政府系研究機関CEAとOPV用材料の共同開発を進めてきた。今回溶媒の種類や塗布の手法を最適化することで、世界最高レベルの変換効率を持つガラス基板のOPV小型セルの試作に成功した。本材料は、ノンハロゲンの溶媒にも容易に溶かすことができ、塗布時のむらが抑えられるため、個体差が少なく安定した発電が可能である。
薄暗い室内と同程度の220ルクスのネオン光源下の検証で約25%の変換効率を確認した。これはアモルファスシリコン太陽電池の1.6倍に相当する。さらに、ガラスと比較して発電材料の塗布が難しいPETフィルムを基板にしたOPVモジュールも作製した。有効面積18cm2の試作品で、上記と同条件下で約130μWの出力に成功した。
同社では今後、温湿度センサや人感センサなどのワイヤレス電源用途で、2022年度中に電池メーカーなどで採用されることを目指す。