気体透過性によって「呼吸ができる」電子材料を開発――長期連続着用できるウェアラブルデバイスにも

ノースカロライナ州立大学と南京郵電大学によって、気体透過性を備え、極薄で伸縮可能な電子材料が開発された。特に生物医学やウェアラブルテクノロジー向けに活用できる技術で、この研究成果は2020年4月29日、『ACS Nano』に掲載されている。

長期間連続装着できるウェアラブルセンサーやインターフェースを実現するには、気体透過性を備えた電子材料が必要になる。着用時に汗や揮発性の有機化合物などが皮膚から蒸発することで、特に長期間着用しても使用者は快適で、透過性がないことによる皮膚炎などを起こす恐れもある。

研究チームは、breath figure法と呼ばれる手法を用いて、均一に穴が分布した伸縮性ポリマーフィルムを作製、銀ナノワイヤーを含む溶液に浸してコーティングし、加熱してプレスすることでナノワイヤーを所定の位置に密封した。

開発したフィルムは、電気伝導率や光透過率、水蒸気透過性のいずれも高いレベルで実現している。最終的には厚さ数μmのフィルムが完成し、皮膚との接触が改善。汗が付着しても優れた安定性を示し、電子機器のS/N比が向上した。これは銀ナノワイヤーがポリマー表面のすぐ下に埋め込まれているためだが、この材料の作製方法は、スケールアップが容易な、単純なプロセスだ。

この材料の、ウェアラブル電子機器での使用の可能性を実証するため、研究チームは2つのアプリケーションのプロトタイプを開発およびテストした。1つ目は、電気生理学センサーとして使用する、皮膚に直接マウントできる乾電極だ。テストでは市販の電極と同等の優れた品質で信号を記録でき、心電図(ECG)や筋電図(EMG)信号の測定など、多数の潜在的な利用法が期待される。

2つ目は、ヒューマンマシンインターフェースを想定した繊維に組み込まれたタッチセンシングを実証した。今回開発されたエレクトロニクス材料を使って、ウェアラブルな「袖」を作成し、ゲームのコントローラとして機能させることができた。

研究チームは、このような気体透過性を持つエレクトロニクス材料を開発できたことは、これまでの伸縮性のある電子機器に対して、大きな前進だとしている。

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‘Breathable’ Electronics Pave the Way for More Functional Wearable Tech

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