完全拘束とは何か―― パラメトリックモデリング超入門(3)

前回は 、CADでのモデリングにおける基準の考え方について説明した。今回はその知識を基本にして、寸法拘束や幾何拘束について解説していく。(執筆:小林由美)

寸法拘束とは

パラメトリック3D CADではスケッチ(線画)を描き、その輪郭を押し出したり、抜いたりして形状を作っていく。

パラメトリック3D CADに初めて触れたとき、悩みやすいのが、スケッチの寸法拘束と幾何拘束の概念だ。3D CADのスケッチでは、四角や丸を描画しても、そこに対して寸法や幾何上の特徴を定義しないといけない。また、スケッチの形状は完全に定義されていることが望ましい(完全拘束)。

完全に定義されると、スケッチの線が黒くなるなど、CAD側で分かるように表示される。その状態になると、点や線分をドラッグしても形状は一切変形しなくなる。逆に、定義されていなければ、点や線分をドラッグすると、形状が変形する。

また基本的な押し出しコマンドは、スケッチで描いた輪郭が完全に閉じている必要がある。線分だけ、もしくは完全につながっていないスケッチを使うモデリングコマンドもある。いずれにしても、完全拘束していく必要がある。

文字だけではピンとこないと思うので、いくつか簡単な例を出しながら解説していく。

四角形の定義

小学校の算数で、正方形や長方形、平行四辺形などの定義について習ったと思う。CADの図形描画も基本、それと同じだ。

例えば、正方形の場合は、「4隅が全て直角(90°)」「4辺が全て等しい」という定義だ。長方形の場合は、「4隅が全て直角(90°)」であることだけで定義される。平行四辺形の場合は、向かい合う2辺が平行であるという定義である。

3D CADの場合「長方形」もしくは「矩形」を選択している時点で、「4隅が全て直角(90°)」である閉じた図形だと自動で定義されている状態になる。実際は、「4つの線が鉛直(垂直な線)である」ことが定義されており、その結果として4角が直角になっているという定義になる。

なので、正方形の場合は、隣り合う2つの辺が等しいことを定義して、1辺だけに寸法を定義する。長方形の場合は、縦横の寸法を定義する。

正方形の定義:赤い丸が「(寸法値が)等しい」拘束、青い丸が「鉛直」。寸法が入っていないので、青い線(未拘束)がまだ混じっている(「Fusion 360」の例)

正方形の完全拘束

長方形の完全拘束:正方形にはあった「等しい」拘束がないことが分かる。

平行四辺形の場合は4辺が鉛直だと成り立たないため、「長方形」や「矩形」ではなく、線分を組み合わせるか、「平行四辺形」のコマンドがあればそれを使って書く、などになる。

次回も引き続き、寸法拘束や幾何拘束の基本について解説していく。

連載記事



ライタープロフィール
小林 由美
メーカーで業務用機器やコンシューマ機器の機械設計を経験後、大手メディアの製造業専門サイトのシニアエディターを経て、2019年に株式会社プロノハーツに入社。現在は、広報、マーケティング、イベント企画、技術者コミュニティー運営など幅広く携わる。技術系ライターとしても活動。


関連記事

アーカイブ

fabcross
meitec
next
メルマガ登録
ページ上部へ戻る