- 2020-4-6
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- IoT, Marina Freitag, ウプサラ大学, シリコン太陽電池, 学術, 色素増感太陽電池(DSC), 銅錯体電解質
スウェーデンのウプサラ大学の研究チームが、屋内照明から光を吸収して発電できる、変換効率の高い色素増感太陽電池を考案した。光の吸収帯が異なる2種類の色素を用いる共増感技術により、変換効率を向上させたことで、可視光の最大34%を電気に変換できる。屋内に設置されるIoTシステムに、外部電力なしで電力供給できる可能性がある。研究成果は、2020年2月13日の『Chemical Science』誌に公開されている。
2025年までに、750億台ものIoTデバイスの大半が、屋内に設置されると推定されている。こうしたIoTデバイスを外部電力なしに作動させるためには、個々のIoTデバイスに普通の屋内環境条件で電力を供給できるエネルギー源を探すことが必要だ。
色素増感太陽電池(DSC)は、半導体電極に塗布した色素が光を吸収し、色素内で励起された電子を電極へ注入することで発電する太陽電池だ。軽量かつ安価で、室内光でも発電可能であることから、シリコン太陽電池を補完する次世代の太陽電池として注目されている。しかし実用化に向けては、さらなるエネルギー変換効率の向上が必要となっている。
今回研究チームは、銅錯体電解質をベースとして、光の吸収帯が異なる2種類の色素を用いる共増感により、変換効率を向上させることに成功した。1000ルクスの照明下で103μW/cm2の電力を発電し、その際のエネルギー変換効率は34%と、従来のシリコン系太陽電池を凌駕する。16cm2の面積を持つDSCアレイにより、外部電力なしに機械学習デバイスを作動させることも実証した。
研究チームを指導する化学科のMarina Freitag助教授は、「照明源のスペクトルを分析することで、室内照明の吸収を最大化できる特殊な色素を調整することも可能だ。また、IoTデバイスに電力を供給するために必要な電圧も確保できる。高効率かつ低コストであり、これまで想定されてこなかった室内エネルギー源を使った自己給電型のスマートIoTデバイスを実現することは、次世代型IoTの展開にとって極めて重要だ」と、DSCに対する期待を明らかにしている。