ベイズ統計を利用して熱力学特性の最適モデルを得る手法を発表

Image by Argonne National Laboratory/Noah Paulson.

米国エネルギー省(DOE)アルゴンヌ国立研究所の研究チームは、宇宙論をはじめとして、ビックデータの分析にも使われるベイズ統計を材料科学分野に応用し、材料の熱力学特性における不確定性の定量化手法を発表した。この手法が確立すれば、実験やシミュレーションデータとそこから構築したモデルの信頼度を決定することができるようになる。研究結果は、2019年9月の『Engineering Science』に掲載される予定だ。

ベイズ統計は統計学の理論のひとつで、大量のデータを統計的に処理して、概念や現象の最適モデルを導き出すために使われる。ベイズ統計の概念は300年以上前、18世紀の英国の数学者で大臣も務めたThomas Bayesに起因する。宇宙論では、以前からベイズ統計を取り入れて宇宙の起源や構造の成り立ちなどを探っている。

このベイズ統計は、中学や高校で学習する確率や統計といった客観的な解析手法とは異なり、事前に既存のモデルや専門家の主観をもとに予測し、実験やシミュレーションからの較正データを利用して最初の予測を更新し、最新のモデルを提供するのが特徴だ。

研究チームは、ベイズ統計学の手法を使ってハフニウム(Hf)のエンタルピーと比熱に対する最適モデルを定義しようとした。ハフニウムはコンピューターエレクトロニクスの鍵になると注目されている金属だ。この材料に関するデータセットは非常に多く、矛盾する情報もたくさんあるが、研究チームはベイズ統計に基づく解析を行い、研究や開発に利用できるモデルを提案した。

解析は、エンタルピーや比熱を数式で表すのに必要なパラメータがどうあるべきかという推測から始まった。例えば、比熱の場合は、デバイ温度やアインシュタイン温度と呼ばれる物質固有のパラメータが利用できるため、過去の論文から、それらの有意義な範囲と値を特定し、事前予測として利用した。

しかし、論文から選択したデータは、誤差範囲がないか排除されたもので、これは大きな問題だった。「宇宙論のように、材料科学では最適なモデルとデータを最も上手に説明するパラメータ値を探して、これらパラメータに関連した不確定性を決定する必要がある。エラーバーをもたない最適なパラメータ値にはあまり意味が無い」という。

論文では、不確定性を持たないデータセットを考慮に入れる方法も考察し、ベイジアンフレームワークの有効性を示している。「科学者や技術者にとって、これは重要な問題だ。我々は、モデルやデータにどれだけ信頼を置けるか見積もる方法を明らかにしている」と、研究チームは語る。

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