- 2020-4-13
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- Behzad Nematollahi, Construction and Building Materials, ひずみ硬化型ジオポリマー複合材(SHGC), ひずみ硬化型セメント系複合材(SHCC), コンクリート, スウィンバーン工科大学, フライアッシュ, レジリエンス(災害への耐性), 学術
オーストラリアのスウィンバーン工科大学の研究チームは2020年3月3日、荷重を加えても砕けることなく「曲がる」コンクリートを開発し、特許を取得したと発表した。地震が多発する地域での建築に向いているだけでなく、材料には産業廃棄物を使用し、製造時の二酸化炭素の排出も少ないことから、人と環境に優しい材料として期待される。元となった研究は、2017年1月30日付けの『Construction and Building Materials』に掲載されている。
コンクリートは、世界で最も広く使われる建築材料だ。「事実、コンクリートは人間が水の次に消費する材料で、その品質は、ビル、橋やトンネルといったインフラのレジリエンス(災害への耐性)に大きな影響を与える」と、筆頭著者のBehzad Nematollahi博士は語る。
セメントを材料にして作るコンクリートは、引っ張ったり曲げたりすると砕けやすい。曲がりに強い「ひずみ硬化型セメント系複合材(SHCC)」も開発されているが、セメントの製造時には石灰岩を焼成するため、大量のエネルギーを消費し、二酸化炭素など温室効果ガスを排出している。
研究チームは、持続可能な低炭素型のコンクリート材料として、常温で硬化しセメントを使わないコンクリート「ひずみ硬化型ジオポリマー複合材(SHGC)」を開発した。材料には、石炭火力発電所から排出される産業廃棄物であるフライアッシュなどを使用し、短いポリマー繊維を混合させた。短繊維を混ぜることで、張力や曲げが加わって複数の微細なひび割れが入っても、砕けることがない。また、常温で製造できることから、従来のSHCCタイプのコンクリートより製造時のエネルギーを約36%、二酸化炭素の排出量も最大76%削減できるとしている。
開発したコンクリートの引張強度は4.6MPaで、引張延性は4.2%を達成した。つまり、力が加わると曲がるコンクリートだ。通常のコンクリートより約400倍曲がるが、同等の強度を有することを実験で確認している。
今回開発したコンクリートでできた建物は、地震、ハリケーンといった自然災害が起こりやすい地域でも倒壊に強いと考えられる。それだけでなく、ロケットなどの衝突、爆風といった人的災害が発生しても無傷でいられる可能性が非常に高いとしている。