組み込み技術分野の雇用に上昇傾向――ヘイズ アジア給与ガイド2020

ヘイズ・スペシャリスト・リクルートメント・ジャパンは2020年4月9日、「ヘイズ アジア給与ガイド2020」を発表した。中国、香港、日本、シンガポール、マレーシアの1244職務の給与水準と、5146人を対象にした雇用の実態調査の結果をまとめている。

調査期間は2019年9月~10月、調査対象は中国2227人、香港特別行政区645人、日本655人、マレーシア825人、シンガポール794人。2020年には地域経済の成長が「緩やか(softening)」になると、雇用主の42%が予想した。雇用主はこれまで同様の質問に対し、3年連続で「変化なし(static)」と回答している。

「2020年も引き続き事業活動が拡大する」と予想した雇用主は、59%。また、企業の43%が「昨年も正社員の数が増加した」と回答しており、同様の人員増加は2020年を通して続くと見ている。日本は、全てのアジア地域の中で正社員数の予測伸び率が最も高かった。

昨年の賃上げに関しては、64%の企業が「3~6%の緩やかな増額を実施した」と回答。また、「2020年に賃上げを行う予定がない」という企業が増加した。賞与(ボーナス)は、60%の企業が「引き続き全従業員に賞与を支給する」と回答する一方、「一部の従業員にのみ支給する」方向へ方針を転換する企業も増えている。

従業員が転職を考える主な動機は、4年前から変化がなく、「給与/福利厚生パッケージ」が62%と最も多い。現在の職場に留まる理由は、43%が回答した「ワークライフバランス」が1位だった。

「現在の報酬レベルに満足している」「とても満足している」と回答した従業員は59%。一方で、割合は昨年の62%から減少している。賃上げに関しては、アジア全域の従業員の45%が雇用者側と同じ「3~6%」を希望している。

自分のスキルについては、「5年後も需要がある」と64%が回答。一方で、「自信がない」が昨年の24%から27%に増加した。また、企業の51%が「現在の事業目標の達成に必要な人材を有している」と回答。企業の54%が「指導可能/技術的なハードスキルが最も自社の組織に必要とされている」と回答している。

日本のデジタルテクノロジーに関しては、2018年と2019年の傾向を引き継ぎ、継続的なテクノロジーの急成長が業界を引き続き促進する。ブロックチェーンの取り組みやオンライン/モバイル決済の拡大、国内での5G(第5世代の無線ネットワーク)導入といった新しいITプロジェクトやオンラインアクティビティの全般的な成長も、需要に拍車をかけている。

日本政府は、2025年までにキャッシュレス決済取引の割合を40%に拡大するという目標を掲げており、多くの組織がローカルでのシステム開発を開始している。ウェブ/モバイル開発は、キャッシュレス決済推進による需要が極めて大きい。開発者は、バイリンガルのエンジニアよりも、母国語レベルで日本語を流暢に話せるエンジニアの採用が進む。

2020年に商用5Gサービスを立ち上げる計画を進めている日本では、研究者やネットワーク/光学/通信エンジニアなど、5G関連の知識を持つ人材の需要が高まり、報酬面で有利になりそうだ。加えて、オンラインウェブアクティビティの世界的な成長が続いていることから、AI(人工知能)、ビッグデータ、クラウドエンジニア/スペシャリスト、デジタルトランスフォーメーションコンサルタントに一貫した需要がある。

日本のインフォメーションテクノロジー(IT)に関しては、2020年も組み込み技術の開発者やテスト担当者の需要拡大が続く見込みだ。現在、日本の自動車業界はスキル不足に直面しているため、適切なスキルを持つ技術者候補の給与は上昇し、特にバイリンガルの技術者の需要が高まっている。

また、新しいテクノロジーを活用するため、AI、ロボティクス、機械学習、オートメーションの新しいスキルを持つIT人材の採用が続いている。プロジェクトをまとめてIT環境全体を管理できるビジネスアナリスト、プロジェクトマネージャー、チームマネージャーの採用も続くことが見込まれ、報酬面で有利になりそうだ。2020年には、3G、4G、クラウド、IoT(モノのインターネット)といった接続テクノロジーの経験を有するエンジニアとマネージャーの雇用ニーズが高まり、給与も上昇する。

Eコマース、モバイルテクノロジー企業も、容易な決済オプションと迅速な製造、配送により、引き続きオンラインサービスを拡大する見込みだ。Apple Pay、Alipay、LINE Payといったアプリケーションの重要度が高まり、典型的な倉庫管理システム、POS、サプライチェーン管理システムへのアップグレードも継続される。

日本のマニュファクチャリングに関しては、機械技術からオートメーションへの大幅なテクノロジーシフトが生じている。しかし、企業がこうした新しいテクノロジーから十分に利益を得るに至っていないことから、今後数年間はマイナスの成果が続くという予測もあり、2020年の給与は2019年と同水準のままになる見込みだ。

自動車セクターは、米中の貿易摩擦を要因の一つとして、2019年初期以降の雇用凍結と人員の承認問題に直面するケースが増えている。一方、プロジェクトマネージャー、アプリケーションエンジニア、フィールドサービスエンジニア、研究開発プロフェッショナルに高い需要が見られる。

日本政府の統計で日本の人口の約30%が65歳を超えていることもあり、新しいテクノロジー分野の職務は、平均1年以上にわたって欠員のままとなっている。高齢化により、企業は日本語スキルの用件を緩和して海外からの採用を進めているが、依然として、会話レベルまたはビジネスレベルの日本語が必要とされそうだ。

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