単純なフッ化アシルを出発物質に、10種以上の高付加価値の有機フッ素化合物を生成

東京理科大学は2020年4月9日、単純なフッ化アシルを出発物質として、10種類以上の複雑なフッ化アシルの生成に成功したと発表した。フッ化アシルをフッ素源として利用できることが明らかになったという。

フッ素を含む有機化合物は幅広い機能性材料に活用されているが、フッ素源として用いられるフッ素ガスやフッ化水素は毒性や腐食性が強いため、取り扱いやすく反応性の高いフッ素化剤の開発が待たれていた。

研究グループは、RC(=O)Fの化学式で表される「フッ化アシル」という化合物群に着目し、研究開発に取り組んできたが、今回の研究でパラジウム触媒によるフッ化アシルの炭素-フッ素結合の可逆的な切断と形成を介して、より複雑で付加価値の高いフッ化アシルを得ることに成功したという。

まず、フッ化ベンゾイルと無水安息香酸は、フッ化アシルと酸無水物と同様の反応進行を示すという作業仮説に基づき、フッ化ベンゾイルと3,5-ジメチル-無水安息香酸を出発物質とし、反応条件の最適化を進めた。その結果、配位子(特定の受容体に選択的に結合する物質)を二座ホスフィンとした場合、おおむね良好な触媒反応を示した。

しかし、反応性や入手容易性などを考慮して配位子にはDPPBを用いることにし、反応温度、無水安息香酸の量も検討した結果、無水安息香酸をフッ化ベンゾイルの3倍量で80℃という条件で収率71%を達成した。

次に、得られた最適化条件の下で、パラジウム触媒によるフッ化アシルの生成という観点から基質適用範囲を探索。その結果、ビス(ジベンジリデンアセトン)パラジウム(0)/DPPBを触媒とした際に、多様なフッ化アシルが生成された。ベンゼン環の4位には、メトキシ基、チオメチル基、ハロゲン基など、触媒条件下でも耐性がある電子供与基と電子求引基の両方があり、フッ化アシルを生成したという。

アシル交換反応について生成されたフッ化アシルのいくつかを調べた結果では、4-メトキシベンゾイルフルオリドは3,5-ジメチル-無水安息香酸のフッ素化に対する反応性が低く、電子求引基を持つフッ化ベンゾイル、2-ナフチルフルオリドでは反応性が高く、43~70%の収率を達成している。

今後、今回見出した現象に基づいた触媒設計や反応設計によって、これまでにない新しいフッ素分子の合成方法につながることが期待できる。

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