- 2020-10-8
- 技術ニュース, 機械系, 海外ニュース
- ISS(Illinois Space Society), イリノイ大学, パデュー大学, パラフィン, ロケットエンジン, 亜酸化窒素-酸素混合物
米イリノイ大学航空宇宙工学科の学生チームが、亜酸化窒素-酸素混合物(Nytrox)とパラフィンを使用したハイブリッドロケットエンジンを開発中だ。2021年6月に開催予定の学生ロケットコンテスト「2021 Intercollegiate Rocketry and Engineering Competition(IREC)」で打ち上げを目指している。
イリノイ大学には、技術プロジェクト、地域への教育活動、専門家との交流を通じて宇宙探査への夢を追求する学生団体ISS(Illinois Space Society)があり、現在150人が活動している。2013年に技術プロジェクトの1つとしてハイブリッドロケットエンジンプロジェクトが発足し、20人がエンジンの開発に取り組んでいる。2018年にサブスケールエンジンの燃焼に成功し、現在はフルサイズのエンジン開発を進めている。
2020年春には、酸化剤タンクの静水圧試験をイリノイ大学ウィラード空港のテスト施設で行う予定だったが、大学側は、安全要件を満たすまではテストできないとした。これにチームは落胆したものの、他の学生ロケットグループと共に安全検討会を開き、対策を講じた。その後、安全手順について綿密に評価し、さらにロケット開発において経験豊富な米パデュー大学とコンタクトを取り、静水圧試験とコールドフロー試験がパデュー大学の施設で実施できることになった。
「こうしたミーティング、人との関わり、計画の進展はスムーズで簡単のように思われるかもしれないが、非常に大変で難しいことだった。大学、専門家、そして他大学からも支援を受けたことは、我々にとって大きな安心となった」と、チームリーダーのVignesh Sella氏は語る。
新型コロナウイルス感染症の影響も受けた。大学はオンライン授業になり、ISSの活動も縮小を余儀なくされたため、学生らはオンラインツールのZoomやDiscordを使って、リモートで論文発表の準備を進めた。海外の学生もいたので、5つのタイムゾーンをまたぐ作業となった。チームはこれまでの成果に満足しており、「秋に挽回する」としている。
エンジンテストの完了後に、ロケットに新型エンジンを組み込む作業に移る。IRECでは、推力4000Nのハイブリッドロケットエンジンを使って、4kgのペイロードを1万フィート(約3000m)まで打ち上げる予定だ。チームはプロジェクトの目的と進捗状況を、2020年8月24日にオンライン開催された「AIAA Propulsion and Energy 2020 Forum」で発表している。