医療崩壊を防ぐためのアルゴリズム――新型コロナウィルスと闘う医療スタッフ向けの意思決定ガイドラインを公開

新型コロナウィルスと闘う医療スタッフを守るための、意思決定ガイドラインを示すアルゴリズム

スタンフォード大学の外科研究チームが、新型コロナウィルス感染症COVID-19から、非常緊急手術室の医療スタッフを守り、個人用防護具(personal protective equipment:PPE)の合理的な使用を判断するアルゴリズムを作成した。処置または手術の緊急性、手術現場におけるエアロゾル感染や飛沫感染の可能性、患者が感染しているかどうかの確証をベースとして構成され、緊急医療現場における意思決定ガイドラインを示す。このガイドラインは、『American College of Surgeons』誌のウェブサイトに公開されている。

中国やヨーロッパ各国で猛威を奮った新型コロナウィルスは、アメリカでも極めて深刻な状況を引き起こし、2020年4月中旬には世界最多の感染者数および死者数を抱えるに至っている。こうした中、最前線で奮闘する医療スタッフ用のPPEの不足は、医療崩壊に繋がりかねない大きな問題だ。

米国外科学会ACS認定のレベルⅠ外傷センターである、スタンフォード・ヘルスケア・センターは、担当地域のカリフォルニア州サンタクララ郡とサンマテオ郡において、2020年3月初旬に初めてのCOVID-19感染例を経験した。そして、3月19日には病院と医学部幹部により、手術室、画像診断と内視鏡検査を含むIVRチーム、品質管理および感染症の専門家から構成されるPPE検討チームが召集され、72時間以内に実行できるガイドラインを作成することが求められた。

このガイドラインにおいて患者は、緊急処置に対する疾病の深刻さに従って、トリアージされる。緊急なケースは、手術現場において予想されるウィルス負荷に基づいて、高リスクおよび低リスクに層別される。気道消化管や内視鏡検査、開腹や腹腔鏡手術など、エアロゾル発生(AGP)と分類される処置は、高リスクに層別される。また、PCR陰性と明確になってない限り、患者はCOVID-19に感染していると仮定される。

陽性患者またはAGP患者を扱う場合、医療スタッフはN-95保護マスク、防護服と手袋、保護メガネを装着しなければならない。PCR陰性と確認された場合のみ、通常の外科用着衣が許される。ウィルス症状(熱、咳、喉の痛み)を示す患者に対しては、緊急処置や手術を遅らせることが検討される。患者の容態が遅延を許容するなら、24時間以内に結果が判明するPCRテストが指示される。もし、患者の容態が24時間待機を許容できない場合、緊急案件と認定されるとともに、患者はCOVID-19陽性として扱われる。

その他、バッグマスク換気と気管内挿管および麻酔処置に従事する医療スタッフ、さらには清掃スタッフについても詳細な意思決定フローが設定されている。

一般外科助教授であるJoseph Forrester博士は、「最前線の医療スタッフが深刻な容態を示す人々を救い、その使命を安全に果たすために必要な装備を確実に準備できる戦略が重要だ」と、語っている。

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