海水を電解質に利用――連続的に再利用できるエネルギーハーベスターを開発

韓国機械材料研究院(KIMM)は2024年9月11日、同大学と慶北国立大学の共同研究チームが、海水に含まれるイオンの移動を利用して、連続的に再利用可能な環境に優しいエネルギーハーベスターを開発したと発表した。従来の水電池は、放電後に継続的に水を循環させるため、外部からの電力供給が必要だが、この海水電池では、海水中のナトリウム(Na)イオンが自発的に初期状態に再分布することによって、放電後でも外部電力不要で初期の開回路電圧を回復できる。海洋環境を長期間モニターするセンサーやデバイスなど、小型装置に活用できると期待される。

これまでに、海水を電解質として海水に含まれるイオンの電極間移動を利用するエネルギーハーベスター海水電池が開発され、航路標識用照明ブイや海中測定器など、小電力を長期間にわたって使用する用途に用いられている。しかし、海水電池は充電できない一次電池であり、放電後に再利用するには、電解質である海水を循環させるための外部電力供給が必要である。したがって、外部電源の供給が難しい環境では、その活用に限界があるという。

研究チームは、放電後においても自発的かつ連続的に再使用が可能な、エネルギーハーベスターの開発にチャレンジした。酸素官能基量が異なり表面電位に差があるカーボンナノチューブと酸化グラフェン膜を、それぞれ陰極と陽極に活用するとともに、海水を電解質として用いる海水電池を考案した。

放電プロセスでは電解質中のNaイオンが陰極に引き寄せられて電流を発生するが、放電後の開回路では、Naイオンが比較的高い酸素官能基量を持つ陽極に引き寄せられて、自発的に初期状態に再分布し、初期の開回路電位差約300mVを回復できることを見いだした。この自己充電プロセスでは外部からの電気エネルギー供給は不要である。

電力密度は24.6mW/cm3を示し、ヒドロゲルを用いた従来の水性電池の電力密度(5.9mW/cm3)の約4.2倍高く、電卓や時計、センサーなどの小型デバイスには充分な電力を供給できるレベルであることが確認された。面積を拡大するか、または多数のセルを直列接続することによって、より高い電力も生成できる。

研究チームは、「新しく開発された技術は、環境に優しいエネルギーハーベスターであり、外部エネルギーの供給なしに連続的な自己充電が可能である。海洋における温度や溶存酸素、無機窒素などの環境要因をモニターするセンサーやデバイスを作動させるエネルギー源として長期間活用できる」と期待している。

研究成果は、2024年5月15日に『Chemical Engineering Journal』誌に公開されている。

関連情報

関連記事

アーカイブ

fabcross
meitec
next
メルマガ登録
ページ上部へ戻る