大気、熱、バイアスストレス耐性を持つ、高信頼性/高移動度電子輸送性有機半導体材料を開発

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東京大学大学院新領域創成科学研究科は2020年5月2日、筑波大学、北里大学、産業技術総合研究所と共同で、高信頼性/高移動度で、大気、熱、バイアスストレス耐性を有し、実用に耐えうる塗布型n型有機半導体材料の開発に成功したと発表した。次世代のプリンテッド・フレキシブルエレクトロニクス分野の起爆材料となることが期待される。

パイ電子系分子からなる有機半導体は、現在実用的に用いられている無機半導体のアモルファスシリコンよりも1桁以上高い10cm2 V-1 s-1級の正孔移動度を有する有機半導体が報告されている。また、この移動度に加え、実用に必要な環境ストレス耐性を示す印刷できるp型有機半導体材料も報告されている。

一方、近未来のIoT(モノのインターネット)のキーデバイスとなる電子タグやマルチセンサーなどのハイエンドデバイスには、正孔移動度と同程度の電子移動度に加え、環境ストレス耐性も併せ持つ電子輸送性(n型)有機半導体の開発が求められていた。

研究グループではこの課題の解決に向け、無機半導体の高い電荷輸送性の起源であるバンド伝導モデルに基づいて、新規n型有機半導体を開発。BQQDI骨格を有する有機分子が優れた性能を発揮することを発見した。

BQQDIは、電気陰性である窒素を最適な位置に導入したことで大気下で安定なn型有機半導体としての母骨格を持つ。この窒素が固体中でイミド基の酸素を組み入れた多点水素結合の形成に寄与し、電子を効率よく運ぶ新たな伝導パスの構築に繋がることで、2次元的に等方性の高い電子伝導層が実現されている。

n型有機半導体BQQDIのa.分子構造、b.単結晶中での隣接2分子およびc.パッキング構造様式

特にフェネチル基を導入したPhC2-BQQDIは、単結晶で3cm2 V-1 s-1の電子移動度、高い信頼性因子を示す。また、BQQDI骨格は多結晶性、単結晶性によらず、大気下でも6カ月以上安定してデバイス駆動する。特にPhC2-BQQDIは、熱ストレスやバイアスストレスに極めて高い安定性を示す。

ボトムゲートトップコンタクト型トランジスタにおけるPhC2−BQQDIのa.単結晶性薄膜、b.伝達特性(信頼性因子r)、c.熱ストレス挙動

研究グループは、この優れた半導体特性がバンド伝導機構に基づくことを実験的に証明。また、分子動力学計算、伝導計算から、今回の合理的に設計された多点水素結合の形成が、分子間振動を効果的に抑制することで電子移動度を向上させていることも明らかにした。

ボトムゲートトップコンタクト型トランジスタにおけるPhC2–BQQDIの単結晶性薄膜のa.ホール効果測定、b.分子動力学計算

さらに、PhC2−BQQDIの高い電子移動度、溶液プロセス性、デバイス安定性を利用し、プリンテッド・フレキシブルエレクトロニクスの肝要な素子であるCMOS論理回路への応用に成功した。

高性能、高安定性、高信頼性を有するBQQDI骨格は、前例のないn型有機半導体であり、IoT社会のキーデバイスである安価な電子タグやマルチセンサーの実用化を加速させることが期待される。富士フイルム和光純薬から2020年5月上旬、PhC2-BQQDIが試薬として販売される予定だ。

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