単層グラフェンの特異な光吸収プロセス、光エネルギーが局在化したナノ領域光電場内で観測 北海道大

今回観測した物質の特異な光吸収プロセスの概念図

北海道大学は11月26日、単層グラフェンを金属ナノ構造表面に配置し、その金属構造が作り出すナノ光源を利用することで、グラフェンが本来は示さない光吸収プロセスを発現しうることを明らかにしたと発表した。

光は無尽蔵なエネルギー源であるため、光エネルギーをいかに有効に外部エネルギーへ変換するかが、将来の光技術の鍵になると考えられている。しかし、光で照らす対象が分子のように光の大きさに比べて非常に小さい場合、物質が光を吸収する割合は極端に小さくなる、つまり、ロスが大きくなるという問題があった。

この問題の解決策として注目されているのが、局在表面プラズモン現象により発現するナノ光源だ。局在表面プラズモン現象とは、金属ナノ構造へ光を照射した際に発現するナノ局所空間に光を非常に小さく局在化させる現象だ。この現象で発現するナノ光源を利用すれば、光とナノ物質間の大きさに隔たりはなくなり、相互作用が極限的に高まる。

物質が光を吸収するということは、物質中の電子が光エネルギーを受けてより高いエネルギー状態になることを意味する。特定のエネルギー状態になるには、特定の光エネルギーが必要で、どのような光でもこの現象を誘起できるわけではない。この決まりは光学選択則として知られている。

研究グループはこれまでに、ナノ光源で単層カーボンナノチューブを照らすことで、光学選択則が打破できることを証明している。しかし、その励起によって物質がどのような状態を取りうるかについては、不明な点が数多く残されていた。

今回の研究では、単層グラフェン上に構造が非常に制御された系及び物質の電子状態を厳密に規定できる電気化学手法を用いることで、本来は観測されない光学選択則の破れを高精度に制御しうることを見出した。

研究では、欠陥のない単層グラフェンを導電性基板上に担持。その後、グラフェン上に構造を厳密に規定した金のナノ構造体を作製した。そして、基板の表面に近赤外光を照射し、ラマン散乱光を取得することで、表面の電子状態について調査した。

さらに電気化学手法を系に導入することで、系の電気化学ポテンシャルを厳密に規定した上でラマン分光測定を行った。この測定によって、電気化学電位に応じてラマンバンドが変化することや特徴的なバンドの出現を観測した上で、ナノ光源に照らされているグラフェンの電子状態について検討した。

今回実験で行ったラマン分光測定では、特に物質が光を吸収するような条件において、強くラマン散乱光が観測される。また、欠陥のないグラフェンをラマン分光測定により調査すると、その電子状態や光との相互作用に関する情報を正確に観測できることが知られている。

研究グループは、種々の測定を行うことで、通常の分光測定では見られない特徴的なラマンバンドが出現することを初めて観測した。このバンドは、近赤外領域の光照射を起源にしているナノ光源に照らされた単層グラフェンにおいて、通常では起こりえない電子の励起が起こったことに由来している。

また研究グループは、電気化学電位制御手法に基づく定量解析の結果、この研究で観測された光学選択則の破れを伴う光吸収によって、より化学反応性の高い励起状態を生成していることを明らかにした。

この成果は、ナノ光源を用いることにより、これまでの限界をはるかに超える光化学反応、光エネルギー変換デバイス実現の可能性を示すものだという。

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