自己発電するウェアラブルデバイスを可能にするハイブリッド3Dプリント技術を開発

エアロゾルジェット方式と材料押出方式を組み合わせた一体型ハイブリッド3Dプリンティングにより、自己発電するウェアラブルデバイスを作成する技術が開発された。

米ノートルダム大学の研究チームが、一体型ハイブリッド3Dプリンティング技術を考案し、外部電源不要の自己発電ウェアラブル圧電センサーデバイスを開発した。エアロゾルジェット方式と材料押出方式を組み合わせたハイブリッド3Dプリンティング技術により、テルル圧電材料ナノワイヤと銀ナノワイヤ電極、シリコーンフィルムを、ウェアラブルなセンサーデバイスとして統合した。人間の手首や首に装着して、デバイス自体の発電能力を活用して、手の動きや心臓の鼓動を外部電源不要で検知する実証試験に成功した。研究成果が、『Nano Energy』誌の2021年12月号に論文発表されている。

スマートウォッチやスマートグラス、フィットネストラッカーなど、ウェアラブルなエレクトロニクスデバイスは、近年急速に市場拡大しているが、長時間使用可能かつ軽量な外部電源が必要という共通課題を抱えている。機械的エネルギーを電気的エネルギーに変換できる圧電材料は、負荷される機械的応力から電圧を発生するので、ウェアラブルデバイスを製造する上で有効な材料のひとつと言えるが、圧電デバイスを3Dプリンティングするのはあまり容易なことではない。

その理由は、3Dプリンティング可能な圧電材料が限られること、圧電材料として分極するのに大きな電界エネルギーが必要なこと、デバイスを構成する複数の材料に合わせて個別プロセスが必要といった課題がある。そのうえ一般的に広く用いられている圧電セラミックスでは、高い焼結温度が必要だ。

これに対応するため研究チームは、複数の材料に対応するため2種類の3Dプリンティング方式を組み合わせた一体型ハイブリッド技術を考案するとともに、圧電材料として分極処理が不要な元素半導体テルルのナノワイヤを活用することにチャレンジした。エアロゾルジェット方式を用いて、優れた圧電特性を有するテルル圧電ナノワイヤを作成するとともに、高い導電性と伸縮性を持つ銀ナノワイヤ電極を作成した。

さらに材料押出方式によって、伸縮性を有する基板を構成するとともにテルルと銀の間の絶縁体としての役割を持つシリコーン膜を作成した。こうして作成した伸縮性を備えた圧電デバイスについて、外部電源を使わずに自己発電機能のみを活用し、人間の手首に装着する場合は手の動きを、首に装着する場合は心臓の鼓動を検知できることを実証した。

「開発した一体型ハイブリッド3Dプリンティング技術は、非常に柔軟性の高いワンステップのプロセスであり、広汎な機能性材料と構造材料を統合できる。これによってプロセスが合理化され、デバイスを作成する時間とエネルギーを削減でき、広範囲な分野での可能性が切り拓かれる」と、研究チームは期待する。

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