スマートウォッチで心臓病ケア――モバイルヘルス技術による統合ケアで心房細動患者の再入院率低減を実証

スマートウォッチなどのモバイルヘルス(mHealth)技術を用いた心房細動(AF)ケアが、再入院や血栓症などを引き起こすリスクを軽減することが示された。この研究は、リヴァプール大学およびLiverpool Heart & Chest Hospitalが主導する国際研究チームによるもので、2020年3月30日、『Journal of the American College of Cardiology』に掲載された。

心房細動は、一般的な心臓の拍動に関する障害で、心拍数が不規則に異常に高くなる不整脈のことだ。心臓の効率と性能が低下することに加え、心臓内に血栓ができやすくなり、それに伴う脳卒中や心不全、認知症などのリスクが高まる。現在、目に見える症状がないために発見されづらいことと、患者が適切な治療を継続しないノンアドヒアランスが主な問題となっている。

同研究チームは、早期に心房細動を発見し、心房細動管理を改善するために、フィットネストラッカー、スマートウォッチ、携帯電話などのモバイルヘルス機能を備えたデバイスを使い、フォトプレチスモグラフィ(光電容積脈波測定法、PPG)を使用することに注目した。PPGは、脈拍に伴う血液量変化を捉えることができるシンプルで低コストの光学技術だ。皮膚表面で測定でき、多くの場合非侵襲的に使用される。

チームはまず、患者のバイタルサインを非常に詳細に、24時間モニターできるモバイルアプリ「モバイルAFアプリケーション(mAFA)」を開発した。mAFAは、患者のバイオメトリクスをグラフ化するだけでなく、臨床医が統合されたケアを提供できるようにしたものだ。医師は定期的に患者のアップデートされた統計を評価し、アプリで患者に連絡し、ABC Pathwayという心房細動の管理に関する手引きに従ってアドバイスを提供する。

これを用いて18歳以上の心房細動患者3324人に対して無作為治験を行った。1678人は通常のケアを受け、1646人はmAFAに基づいて統合されたケアを受け、6カ月目と12カ月目に外来クリニックで追跡した。

その結果、脳卒中、全身性血栓塞栓症、死亡および再入院の発生が、mHealth介入グループでは1.9%、通常のケアグループでは6%と、有意に低かったことが示せた。再入院率については、前者で1.2%、後者で4.5%だった。

これらにより、心房細動などの心臓病をモニターし治療するための統合されたアプローチを採用することには、明白な利点があることが示された。

関連リンク

‘Smart’ devices effective in reducing adverse outcomes of heart condition(ScienceDaily)
‘Smart’ devices help reduce adverse outcomes of common heart condition(University of Liverpool)

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