- 2020-6-9
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- Ga, Pt, Pt1サイト, Pt3サイト, PtGa-Pb/SiO2, PtGa金属間化合物, プロパン脱水素, プロパン脱水素触媒, プロピレン, 京都大学, 北海道大学, 東京都立大学, 炭素析出, 研究, 耐久性, 触媒, 触媒活性点
北海道大学は2020年6月5日、京都大学および東京都立大学と共同で、高温条件下で世界最高水準の高い耐久性を示すプロパン脱水素触媒を開発したと発表した。
さまざまな化成品の原材料として利用されるプロピレンをプロパンから製造するプロパン脱水素では、高い収率でプロピレンを得るために600℃以上の高温で反応させる。しかし高温下の製造プロセスでは、触媒の表面上に炭素が堆積する炭素析出が発生するために、触媒性能が著しく劣化。安定的に製造するためには連続的な触媒の再生が必要で、触媒再生コストの削減が望まれていた。
今回の開発では、独自の性質と構造を持つ白金(Pt)とガリウム(Ga)の合金(PtGa金属間化合物)に着目。PtGaは熱安定性が高く、高温でも構造が変化しない特徴を持つ。さらに3つのPt原子からなる「Pt3サイト」と、1つのPt原子が複数のGa原子に囲まれて孤立している「Pt1サイト」と呼ばれる2種類の触媒活性点が存在するという性質も持つ。
研究チームは、Pt3サイトはプロピレン生成と同時に炭素析出を進行させるが、Pt1サイトはプロピレンを選択的に生成して、炭素析出を抑えることができる優れた触媒活性点として機能すると予想。Pt3をブロックするためにPtGaの表面に鉛(Pb)を添加した新触媒PtGa-Pb/SiO2を開発した。600℃以上のプロパン脱水素において、従来の触媒を用いた場合はプロパン転化率が著しく低下するが、新触媒を用いた場合は低下せず、反応開始から96時間をおいても初期の転化率30%を維持。非常に高い耐久性を示した。この触媒寿命は、同様の条件下においてこれまで報告されているものよりも2倍以上も高い世界最高水準の耐久性になるという。
さらに、プロピレン選択率は99.6%にもなり、炭素析出を含む副反応が高いレベルで抑制されていることも分かった。
また今回開発した触媒の表面構造解析を実施した結果、Pbの添加によって実際にPt3サイトがブロックされており、Pt1サイトはブロックされていないことを確認した。
今回開発した高い耐久性と優れた選択性を持つ触媒により、触媒再生工程を省くかまたは簡易化した、低コストかつ高効率なプロパン脱水素工場プロセスの開発が期待できるという。また、今回発見したPt1サイトの触媒性能が、プロパンだけでなく低級アルカンの脱水素やメタンの有効利用などにも応用できる可能性が高いという。