世界最小電圧となる乾電池1本で発光する、青色有機ELを発表 東工大、富山大、静岡大

東京工業大学科学技術創成研究院/大阪大学接合科学研究所の伊澤誠一郎准教授は2023年9月21日、富山大学、静岡大学と共同で、世界最小電圧で発光する青色有機ELを発表した。乾電池(1.5V)1本で駆動する。

有機ELは、テレビやスマートフォンディスプレイなどで実用化されているが、駆動電圧が高く消費電力が大きいという問題を抱えている。特に青色は、赤、緑、青の光の三原色の中で最もエネルギーが大きく、発光を得るのが一番難しい。通常は4V程度の電圧が必要となる。今後、有機ELが応用範囲を拡大するには、青色発光素子の電圧と消費電力の低減、安定性の向上が技術課題となる。

研究グループは、2種類の有機分子の界面を使った独自の発光原理を用いて、1.5Vの乾電池1本で光る青色有機ELを開発した。まず電子と正孔(ホール)がデバイスに注入された後、2種類の電子ドナー/アクセプター分子の層の界面で再結合を起こし、電荷移動(CT)状態という励起状態を形成する。

次に、CT状態からエネルギー移動が起こり、ドナー層中で三重項励起状態を生成する。その後、ドナー層中で、2つの三重項励起状態から、三重項―三重項消滅により高エネルギーの一重項励起状態(S1)を作り出すアップコンバージョン過程を経て、青色発光を実現する。

この発光メカニズムを実現するドナー/アクセプター分子の組み合わせを探索し、有機ELデバイスを最適な組み合わせで作製した。その結果、462nmに最大発光強度をもつ青色発光(光エネルギーで2.68eVの青色の発光)が観測された。また、青色発光は1.26Vから認められ、スマートフォンディスプレイ程度の発光輝度である100cd/m2には1.97Vで到達した。

(a)開発した青色有機ELの発光スペクトル、(b)輝度-電圧特性、(c)乾電池(1.5V)1本で青く光る写真

今回のような超低電圧での青色発光は、2014年にノーベル賞を受賞した青色発光ダイオードでも不可能であり、有機、無機材料、双方を含めても世界最小電圧で光る青色発光素子といえる。また、素子の安定性を検証したところ、従来の青色りん光の有機EL素子と比べ、素子寿命が90倍程度長かった。

今回の研究は、さらなる進展によって、大画面テレビやスマートフォンディスプレイなどの機器の消費電力を大幅に低減する大きな一歩となる。研究グループは今後、開発した技術をディスプレイ機器へ応用するため、より色純度が高いスペクトル幅が狭線な青色発光を低電圧で実現することを目指す。

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世界最小電圧で光る青色有機ELの開発に成功 有機ELディスプレイの省エネ化・長寿命化に向けた大きな一歩 | 東工大ニュース | 東京工業大学

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