8000ボルト以上に対応する薄膜酸化ガリウムトランジスタを開発

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米バッファロー大学は、2020年6月1日、8000ボルト以上に対応する薄膜酸化ガリウムトランジスタを開発したと発表した。研究成果は『IEEE Electron Device Letters』に2020年4月29日付で発表されている。

従来から、パワーエレクトロニクスの未来を担う材料として、4.8eVという非常に広いバンドギャップを持つ酸化ガリウム(β-Ga2O3)に注目が集まっている。バンドギャップが大きい材料で作られたシステムは、バンドギャップが小さい材料で作られたシステムよりも薄く、軽く、より多くの電力を処理できるという。

バッファロー大学のUttam Singisetti准教授は「パワーエレクトロニクスシステムのサイズを大きくせずに、より大きな電力負荷に対応できる次世代の電子部品開発が必要なのです」と、研究対象に薄膜酸化ガリウムを選んだ理由を語っている。

酸化ガリウムのバンドギャップはシリコンのバンドギャップ(1.1eV)よりはるかに大きく、バンドギャップが約3.4eVの炭化ケイ素や約3.3eVの窒化ガリウムも超えており、最も潜在的可能性を持っているといえるだろう。

研究者らは、薄膜酸化ガリウムトランジスタを作製し、半導体表面の化学反応性を低下させるコーティングを含む化学プロセスに工夫を凝らした。マイクロエレクトロニクスでは一般的に使われているエポキシ樹脂ベースのSU-8の層を、パッシベーション層として半導体表面に追加したという。

その結果、トランジスタが最大で8032ボルトの電圧を処理できることを実験で確認した。並行して開発中だった炭化ケイ素や窒化ガリウムで作られたトランジスタよりも優れた値だったという。ブレークダウン電圧が高いということはデバイスが処理できる電力が大きくなるということであり、SU-8のパッシベーション層はシンプルだがその効果は絶大であったようだ。

また、オン抵抗は13kΩ・mmであり、プラズマによってチャネル領域に損傷が起きたために高い値となったようだ。オン抵抗とオン電流密度についてはパッシベーションを施すことによる値の変化はなかったという。

シミュレーションによると、トランジスタの電界強度は1cm当たり10メガボルトを超えるとみられるという。電界強度は所定の場所における電磁波の強度を測定し、パワーエレクトロニクスシステムのサイズと重さを決定する値であり、実用化へ厚い期待が寄せられるだろう。Singisetti准教授は、今後、実際に電磁波の強度を測定してシミュレーション結果を検証する必要があると考えているようだ。

開発された薄膜酸化ガリウムトランジスタは、電力の制御変換を担うパワーエレクトロニクスシステムの小型化や効率化を促し、電動車両の走行距離や電気飛行機の航続距離の改善につながるかもしれない。

関連リンク

Study: Paper-thin gallium oxide transistor handles more than 8,000 volts
Field-Plated Lateral Ga2O3 MOSFETs With Polymer Passivation and 8.03 kV Breakdown Voltage

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