隕石由来の高機能磁性材料を人工で作製――パルスレーザーとロボット制御による新製法の実現 東京理科大など

東京理科大学は2019年2月20日、高輝度光科学研究センター、東京大学と共同で、隕石に由来する高機能磁性材料「L10型FeNi規則合金」の人工創製に成功したと発表した。

L10型FeNi規則合金(L10-FeNi)は、レアアースフリーで高い磁気機能を有する磁性材料で、鉄隕石に含まれる。その有用性から、世界的な研究開発が加速している。近年では、分子線エピタキシー法や巨大ひずみ加工法、脱窒素法など様々な作製手法が報告されていた。しかし、L10-FeNiの成長機構には未だ謎が多く、その作製技術には議論の余地が多く残されていた。

そうした中、研究グループは、原子層スケールでほぼ理想的な薄膜を作製できるパルスレーザー蒸着法に着目。Arduinoによるハードウェアの高度化とLabVIEWによる制御ソフトウェアの開発により、パルスレーザー蒸着装置を精密制御し、L10-FeNiの作製技術を開発した。

そして、SPring-8のBL46XUを用いたX線構造解析や、東京大学物性研究所の超伝導量子干渉磁束計、東京理科大学の原子間力顕微鏡を用いた物性解析を実施し、L10-FeNiの形成を確認した。

同時に、成長温度300℃でL10型構造の形成が最も促進しているという、従来法とは異なる特徴も確認。これは、パルスレーザー蒸着特有の膜生成が起こっていることが示唆されるという。また、表面自由エネルギーの観点から島の形状と結晶構造を議論した結果、パルスレーザーの瞬間的な昇華と高密度の生成核が起源となって、L10-FeNiの形成に至ることが分かった。

作製された試料の特性

研究グループはL10-FeNiについて、新しい機能性磁性材料として、次世代電子デバイスや電気自動車のモーター等、環境エネルギー技術への貢献が期待できるとしている。

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