微弱な電気を発生させる布でウイルスを「殺菌 」――自己除菌型マスクへの応用も視野に

米インディアナ大学は、2020年5月18日、湿気によって弱いレベルの電気を発生させる仕組みを持った布地にコロナウイルスが触れると不活化するという研究結果を発表した。詳細は、2020年5月15日付で化学系プレプリントサーバー『ChemRxiv』上で公開されている。記事執筆時点では、まだ査読を経ていないようだ。

ウイルスが帯電することはよく知られており、ウイルスが宿主に感染するプロセスにおいて静電相互作用が重要な役割を果たしているという。研究者らは、コロナウイルスの構造を調べ、ウイルスが静電相互作用のプロセスを利用できないようにするというアイデアを、マスクに応用することを考えた。先行研究では、弱いレベルの電場を生成する仕組みを持つ生地にウイルスが触れると、ウイルスが必要とする静電気力が阻害されるため、1分以内にウイルスが持つ感染能力が失われたことが実証されている。

研究者らのデータによると、米Vomarisが実用化している広域抗菌性創傷治療用包帯の生地から発生した低レベルの電流によって、豚呼吸器型コロナウイルスは不活化したという。ただし、新型コロナウイルスに対する実証実験はまだ行われていないようだ。この包帯はアメリカ食品医薬品局(FDA)承認済みで、「V.Dox」と呼ばれる電子薬(エレクトロシューティカル)表面技術を施している。V.Dox技術では、生地に銀と亜鉛から成るマイクロセル電池をドットマトリックス状に埋め込んでおり、湿気をトリガーにして低レベルの電流が発生し、電場が発生するという。

研究者らは、低レベル電場生成の仕組みを持つ生地をマスクに応用することを考えており、FDAから緊急時使用許可(EUA)の承認を受けるため、研究データを提出済みだという。

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