容易かつ選択的に半導体型カーボンナノチューブを分離する方法を発見――温度応答性高分子を用いた一液混合の分離手法 東邦大学と産総研

東邦大学は2020年7月13日、産業技術総合研究所と共同で、一液混合で簡便かつ直径の小さな半導体型カーボンナノチューブを選択的に分離する方法を開発したと発表した。

単層カーボンナノチューブ(SWCNT)は、グラフェンシートの巻き方によって金属にも半導体にもなるなど、さまざまな特性を発揮する。しかし、生成段階で種々の異なる構造を持つナノ物質の混合物として得られるため、構造制御が難しかった。これまで遠心分離やカラムクロマトグラフィー、二相抽出などの方法が開発され、これらによって金属型と半導体型のSWCNTを分離してきた。

今回同大学らが開発したのは、一液中にすべての材料を混合することで分離工程をシンプルにできる、温度応答性高分子を用いたSWCNTの分離手法だ。温度応答性高分子の一つであるPNIPAM(ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド))は、体温以上に温めると相転移を生じる。この性質を利用することでコール酸ナトリウムで分散させたSWCNTを混合して加熱すると、半導体SWCNTのみ液相に分離できることを発見した。また、併せてその分離機構も解明。SWCNTとSWCNTを取り巻く界面活性剤分子、および温度応答性高分子の3つの成分の相互作用について、各成分の濃度依存性を明らかにした。

温度応答性高分子の水溶液にコール酸ナトリウムで分散した単層カーボンナノチューブ溶液を入れ加熱した様子。得られた溶液の蛍光スペクトルを測定すると(6,4)の螺旋度(カイラリティ)を持つ単層カーボンナノチューブに由来する蛍光ピークのみ観察できた。

また、添加物として次亜塩素酸ナトリウムやホウ酸ナトリウムを加えることで、直径の小さな半導体型カーボンナノチューブを選択的に分離できることも見出した。添加剤によってSWCNT表面への界面活性剤分子の吸着状態が、SWCNTの直径や電気特性によって変化し、混合した温度応答性高分子との相互作用の強さが変わることを明らかにした。

今回の研究結果は、従来よりも簡便に単一構造のカーボンナノチューブの機能性インクを得られる技術として期待されるという。また、分離規模を大規模化する際に障壁となってきた超遠心分離操作も不要になる。さらに、PNIPAMが可逆的に温度相転移できるのでリサイクル可能で、SWCNTの分離試料を安価かつ大量に得ることができる可能性があるという。

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