- 2020-8-3
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- Cell Reports Physical Science, FCV, セントルイス・ワシントン大学, 学術, 将来型燃料電池, 水素燃料電池, 直接水素化ホウ素ナトリウム燃料電池(DBFC)
セントルイス・ワシントン大学の研究チームが、従来の水素燃料電池の2倍の電圧を生成する、高出力の直接水素化ホウ素ナトリウム燃料電池(DBFC)を開発した。液体燃料を直接電極へ供給できる直接燃料電池の1種であり、水素化ホウ素ナトリウム液体燃料の流量やセル滞留時間等の流れ場の最適設計により、副反応などの阻害要因を抑制して高出力を達成している。FCVなど輸送機関の電源供給を革新する技術と期待されるものであり、研究成果が2020年6月17日付の『Cell Reports Physical Science』誌に公開されている。
直接燃料電池は、メタノールやエタノールなど取扱いが容易な液体燃料を、改質なしで直接用いることができることから、エネルギー密度が高く小型で軽量な将来型燃料電池として注目を集めている。水素を輸送、貯蔵する必要がなく低コストと、水素燃料電池に替わる可能性があり、自動車メーカーを中心に活発に研究開発が行われている。
特に水素化ホウ素ナトリウム燃料電池は、理論電圧が従来よりも3割程度高いことが知られており、高電圧の分だけセル数を減らすことができ、小型化とコストダウンに貢献すると考えられている。一方で、水素化ホウ素ナトリウムの加水分解などの寄生副反応が生ずるとともに、触媒表面に生成する水素の気泡が陽極を不動態化するなど、開発には依然ハードルがある。
今回研究チームは、セルにおける液体燃料の流量や滞留時間、pHなどを含めた流れ場の設計を最適化することで、反応生成物を適正に輸送するアプローチを構築、寄生副反応および水素気泡による不動態化を抑制することに成功した。その結果、最先端の高分子電解質型燃料電池が0.75Vで動作するのに対して、1.5Vで動作する直接水素化ホウ素ナトリウム燃料電池の実証に成功した。1.1Vにおけるピーク出力密度は約0.9W/cm2と、従来の2.4倍の値が得られた。電圧が2倍になることで少数のセルでスタックを構成でき、小型軽量の高効率燃料電池を設計できる。
研究チームは、最適な流量や滞留時間、流れ場条件を、レイノルズ数やダムケラー数を用いて無次元化することに成功しており、水素化ホウ素ナトリウム以外の液体燃料電池にも適用して性能向上をはかることができる。研究チームは、現在、「潜水艦とドローン」用に、セルスタックをスケールアップすることに取組んでいる。
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- Engineers develop new fuel cells with twice the operating voltage as hydrogen fuel cells(Washington University in St. Louis the SOURCE)
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