ガラスが固まる直前の運動メカニズムを全容解明 東大

東京大学は2023年3月31日、ダンベル型分子の大規模シミュレーションによって、分子性液体がガラスとして固まる直前の運動メカニズムの全容を解明したと発表した。同大では1995年に提唱された理論の正しさを証明する成果だとしている。

ガラスは液体を急激に冷やすことで作られるが、ガラスとして固まるガラス転移の直前で、液体分子がさまざまな時間スケールで複雑な運動をしている。この運動は1995年、2段階の階層的なポテンシャルエネルギー地形によって説明されたが、この理論の数値的な証拠は得られていなかった。

東京大学大学院総合文化研究科の研究グループは、液体の構成粒子を異方的な形状にした系の大規模分子動力学シミュレーションを行い、理論の検証を試みた。

研究グループはまず、実空間で分子を構成する原子同士がどのように接続しているかに着目して、分子同士の接続状態を分類。ダイマー系のJG β緩和とα緩和の実空間運動を明らかにした。そのうえで、エネルギー地形の解析を行い、2段階のエネルギー地形を直接的に検証した。具体的には、各時刻で所在するエネルギー地形内の盆地でのエネルギーを計算し、それが時刻とともに初期値からどれだけ離れるかを定量化した。

こうした検証の結果、長時間と短時間で発生する運動がそれぞれ分子の回転と並進運動に起因することを明らかにし、これらの運動に対する明瞭な実空間的理解が得られた。エネルギー地形に関しては、2段階の階層構造がこれらの2つの過程を生み出すことを数値的に示し、1995年に提唱された理論の正しさを証明した。

研究グループは、今回の研究成果は金属材料から薬品に至るまで、身の回りに存在する多様なガラス的物質の制御や設計に向けた指針となるとしている。

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