- 2020-7-24
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- 3Dプリンター, ACM CHI Conference on Human Factors in Computing Systems, ELデバイス, MIT Media Lab, Ollie Hanton, ProtoSpray, エレクトロルミネセンス(EL)塗料, スプレーコーティング, タッチスクリーン, ブリストル大学, 学術, 導電性プラスチック
タッチスクリーンといえば、長方形のような平面形状をしたものが多いが、英ブリストル大学の研究チームは、自由な形状にできるタッチスクリーンを開発した。3Dプリントオブジェクトにエレクトロルミネセンス(EL)塗料をスプレーするという簡単な方法で、複雑な形の表面もディスプレイとして使えるようになる。研究結果は2020年4月、人と情報システムの相互作用に関する国際会議「ACM CHI Conference on Human Factors in Computing Systems」で特別賞を受賞した。
研究チームはアーティストが壁に絵を描く方法に着想を得て、MIT Media Labと共同で、3Dプリンティングとスプレーコーティングを組み合わせた「ProtoSpray」技術を開発した。そこから作られるディスプレイの構造は、従来のELデバイスと同様で、発光層と誘電体を電極で挟んだものだ。元となる形状とベース電極を3Dプリントし、発光材料はスプレーして定着させる。研究チームによれば、導電性プラスチックやEL塗料といった材料に関する知識が不要で、誰でも利用しやすい方法だという。
「我々はディスプレイを2次元の四角い入れ物から解放した」と、論文の筆頭著者であるOllie Hanton氏は語る。論文では、スプレーの方向、表面のトポロジー、プリンターの解像度といった要因を解析し、スプレーノズルを一般的な3Dプリンターに組み込む方法を議論している。
公開された動画では、平面はもちろん、球面、立方体、さらにはメビウスの輪のような複雑な形状の一部が発光する様子が確認できる。腕時計型のデバイスの作製工程では、EL塗料だけでなく誘電体や電極材料も次々にスプレーし、見事に光らせている。
「3Dプリンターは個人が3Dオブジェクトを作るのに使えるが、我々の研究はさらに踏み込み、プラスチックだけでなくディスプレイを作製するのに必要な他の材料もプリントできるようにした。プラスチックを3Dプリントして、通電すると光る材料をスプレーすれば、情報の表示やタッチの検出ができる物を好きな形で作れる」と、Hanton氏は語る。
研究チームはこのProtoSprayを、物を作ったり絵を描いたりするときに使うインクやペンキ、粘土のように身近な素材にしたいとしている。現在は人の手でスプレーしているが、今後は3Dプリンティングとスプレー作業を自動で行う機械を作ることも視野に入れている。
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