ケンブリッジ大、太陽光をエネルギーに、クリーンなアルコール燃料を生成する技術を開発

CREDIT: MOTIAR RAHAMAN

ケンブリッジ大学の研究グループは、光合成の過程を再現して、二酸化炭素と水から液体燃料を生成する太陽光技術を開発した。生成物は、既存の航空機や自動車にそのままで使えるアルコール燃料として利用できる。研究成果は、『Nature Energy』に2023年5月18日付で公開されている。

化石燃料に代わるクリーン燃料として、植物から作られるバイオエタノールが注目されている。しかし、バイオエタノールなどのバイオ燃料には、食用作物の農地と競合して原料を栽培しなければならないという問題がある。実際、米国農務省によると、米国で栽培されるトウモロコシの約45%がエタノール生産に使用されているという。

ケンブリッジ大学のReisner教授の研究グループは、数年前から光合成に着想を得て、持続可能なカーボンニュートラル燃料の開発に取り組んでいる。だがこれまで研究グループは、水素と一酸化炭素の混合物である合成ガスなど、単純な化学物質しか作ることができなかった。合成ガスは、燃料や医薬品などの材料として使用できるが、人工葉技術を実用的なものにするためには、太陽光を用いて1ステップでより複雑な化学物質を生成できるようにする必要がある。

今回の研究では、銅とパラジウムをベースにした触媒を新たに開発し、合成ガスが生成する中間過程を経ることなく、エタノールとn-プロパノールを生産することに成功した。エタノールやn-プロパノールはエネルギー密度が高く、貯蔵や輸送が容易な燃料だ。

これまでも電力を利用して、エタノールやn-プロパノールを生産する技術はあったが、太陽エネルギーだけを使ってこれほど複雑な化学物質を生産できた例はないという。

今回の研究はまだ概念実証実験であり、効率はまだ低い。しかし、研究グループは太陽光をより多く吸収して、より多くの燃料に変換できるように、光吸収体と触媒の最適化に取り組んでいる。また、大量の燃料を生産できるよう、スケーラブルな装置の開発も必要だ。

Reisner教授は、「まだしなければならないことがあるにせよ、この人工葉に何ができるのかを示すことができました。単純な化学物質の壁を超えて、化石燃料からの脱却に直接役立つ物質の生成が可能だと示すことは重要です」と述べている。

関連情報

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Solar-driven liquid multi-carbon fuel production using a standalone perovskite–BiVO4 artificial leaf | Nature Energy

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