柔軟な衣類向け温度調整材料を開発――カーボンナノチューブの熱電変換効果を利用

Credit: Kony Chatterjee.

ノースカロライナ州立大学は、温度を調整できる衣類向けの熱電材料として、新しいカーボンナノチューブ(CNT)薄膜を開発したと発表した。研究成果は2020年6月29日、『ACS Applied Energy Materials』に掲載された。

現在、温度を調整できる衣類の研究は、硬い材料を布地に組み込むものが中心で、市販されているウェアラブル熱電デバイスも柔軟性を備えたものは少ない。

一方、CNTは適切に使用すれば安全であり、安価なものもある。また、CNTには熱電変換効果があることが知られており、ウェアラブルデバイスに応用した場合、着用者に面した部分の熱を奪って冷却する手頃な熱電材料になる可能性がある。

今回研究チームは、次世代スマートファブリックの魅力的な候補となるにふさわしい熱的、電気的、物理的特性の組み合わせを持つCNT薄膜を合成した。この材料は、柔軟性があり、空気中で安定している。また、比較的単純で過度に高い温度を必要としない、2段階のプロセスで簡単に製造でき、安価でもある。

研究チームは、柔軟な薄膜の熱伝導率を測定するため、時間領域サーモリフレクタンス(TDTR)を用いることで、複雑な微細加工や材料処理なしに、高速かつ非接触で熱伝導率を測定する手法を開発した。

研究チームによると、この新たなCNT薄膜の特徴の1つは、この材料の熱伝導率が比較的低いことだ。つまり、着用者を冷やすために用いた場合、体から離れた熱は着用者の元に戻らず、着用者を温めるために用いた場合、熱は電流とともに体に向かって移動し、大気には戻らないという、衣料として優れた特性を備えている。

また、この材料の、2つの環境間の温度差(温度勾配)を用いて電気を生成する能力(ゼーベック係数)を測定し、電気伝導率、熱伝導率、ゼーベック係数の3つの特性から、熱電材料の性能を評価する無次元性能指数(ZT)を計算したところ、300Kで最大ZTが0.019となった。研究チームによれば、これは温度差を利用して小型電子機器へ電力供給するデバイスとしても利用できるという。

研究チームは、エネルギーハーベスティングに加えて、この材料を布地自体に統合し、着用者を温めたり冷やしたりできるスマートな布地を設計することを目指している。住居全体または空間全体ではなく、身体の周りの個人的な空間を温めたり冷やしたりすることで、サーモスタットを1〜2度下げることができれば、全体として莫大なエネルギーを節約することになると、その意義を説明する。

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