プローブ不要で物体の内部温度を非接触で計測する技術

IMAGE COURTESY OF MIKHAIL KATS

ウィスコンシン大学マディソン校の研究チームは、「深度サーモグラフィ(depth thermography)」と呼ぶ新しい技術を開発し、特定材料の内部温度が非接触で計測できると発表した。半導体デバイスや次世代原子炉など、従来の温度プローブが作動しない分野での利用が期待される。研究結果は、2020年3月5日付けの『ACS Photonics』に掲載されている。

物体は赤外線を放射しており、その量は温度が高くなると増加する。サーモグラフィのように熱放射を計測する装置はこの性質を利用して、物体表面から放射される赤外線を計測し、温度に換算している。

「我々は物体から放射される熱放射のスペクトルを計測し、非常に高度なアルゴリズムを使うことで、表面だけでなく、表面下数十から数百μm内側の温度も推測できる」と、研究チームを率いるMikhail Kats教授は語る。この技術は、赤外線を部分的に通す材料で有効だとしている。

研究チームは、まず、フューズドシリカ(溶融石英)のプレートを加熱して、分光器でスペクトルを測定した。そこから内部の温度分布を推測するために、深さ方向に温度勾配を持たせた溶融石英モデルを作成。この計算ツールを使用することで、実験結果に最も一致する温度勾配を求めることができた。

研究チームは、今回の実証実験を発展させて、より複雑なマルチレイヤー材料の温度計測にも応用したいとしている。工程を改善するために、機械学習を利用することも考えている。

「完全リモート、非接触で材料の熱特性を計測するという、これまでにない方法だ」と、Kats教授は語っている。用途も幅広く、材料の熱伝導率や光学特性を温度プローブを使わずに計測できるという。

例えば、半導体デバイスを計測すれば、動作中の温度分布についての知見が得られる。さらに、赤外線ハイパースペクトルカメラなどの2次元イメージングと組み合わせると、3次元の温度分布を計測することもできる。高温の気体や液体の集まりを計測しマッピングするのにも使える。

中でも研究チームが注目しているのが、次世代原子炉だ。それは、700℃の高温に達する溶融塩を一次冷却材として使用する原子炉で、温度プローブを必要としない非侵襲的な深度サーモグラフィは、溶融塩の体積全体の温度を把握することができるとしている。

関連リンク

New method measures temperature within 3D objects

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