オーストラリアのモナシュ大学は、失明した人に視覚を取り戻させるシステム「Gennaris」バイオニックビジョンシステムを開発し、最初の治験に向けた準備をメルボルンで進めていることを明らかにした。
医学的失明とされる人の多くは、視神経に損傷があり、網膜から視覚中枢への信号伝達が阻害されている。モナシュ大学の開発したGennarisは、損傷部分をバイパスして信号を伝えることができるシステムだ。Gennarisは小型カメラの付いたヘッドギアと、脳表面の一次視覚野にインプラントされた9×9mm角の「タイル」と呼ばれる小型電子デバイスから構成される。タイルは最大で11個インプラントされ、それぞれに電子回路を持つ。
Gennarisはヘッドギアのカメラからの高解像度映像はビジョンプロセッサーで処理された後、タイルにワイヤレス送信される。各タイルは毛髪ほどの太さの微少電極を43個備え、一次視覚野の神経に刺激を与える。この刺激が「眼閃(phosphene)」として知られる短いフラッシュを引き起こし、脳はそれを画像として解釈する。
ヒツジに10個のタイルをインプラントした前臨床試験では、7個のタイルを介して9ヵ月間にわたり合計2700時間の刺激を与えたが、健康への悪影響は観察されていない。試験の結果は神経工学に関する論文誌『Journal of Neural Engineering』に掲載されている。