高いキャリア移動度を有し、低電圧で駆動可能な有機半導体材料を発見――フレキシブルディスプレイなどでの応用に期待 理化学研究所

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理化学研究所は2021年7月5日、高いキャリア移動度を有しながら、低電圧で駆動可能な有機半導体材料を発見したと発表した。

有機半導体材料は、軽量でフレキシブルという特性を有する一方で、無機半導体材料と比べてキャリア移動度が低く、応用範囲が限られる点が課題となっていた。高移動度有機半導体として知られるペンタセンやジナフトチエノチオフェン(DNTT)、ベンゾチエノベンゾチオフェン(BTBT)誘導体の移動度でも、1~10cm2/Vs程度に留まっている。

理化学研究所の共同研究チームは今回、ペリ縮合多環芳香族炭化水素のピレンに4つのメチルチオ基(-SMe)が導入された既知の分子メチルチオピレン(MT-pyrene)に着目し、その構造および半導体特性を調査した。同研究チームはこれに先立つ2020年1月、メチルチオ基を有機半導体骨格中へ位置選択的に導入することで、結晶中での有機半導体分子の分子配列を制御できることを発表している。

メチルチオピレンでは、メチルチオ基が結晶中において分子間相互作用の方向性と強さに影響し、「二次元π積層構造」と呼ばれる分子配列へと変化することが明らかになった。電荷輸送に不適な構造を与える母体ピレンとは大きく異なる特性となっている。

また、メチルチオピレンを半導体材料に用いた有機電界効果トランジスタを作製したところ、26個の素子の平均で32cm2/Vs、最高で37cm2/Vsと高い移動度を示した。

メチルチオピレントランジスタと既存材料の移動度の比較

さらに、作製したトランジスタが急峻なスイッチング特性を有していることも確かめられた。

一般的な有機半導体結晶中での電荷輸送は、有機半導体分子上に局在化した電荷が隣の分子に跳び移る「ホッピング伝導」であり、分子間での電荷移動にエネルギーを要することから移動度が低い。

これに対して、実験で得られた移動度の値は、ホッピングモデルで予測される移動度(4.5cm2/Vs以下)よりも1桁程度高く、メチルチオピレンでは結晶中を広がった波として伝播する「バンド伝導」でキャリアが移動することが想定された。

実際に移動度を測定したところ、温度の低下とともに上昇するというバンド伝導の特徴にも合致したため、メチルチオピレンが有機半導体では珍しいバンド伝導を示す材料であることが確かめられた(下図右)。

メチルチオピレントランジスタの伝達特性(左)と移動度の温度依存性

メチルチオピレンは合成が容易であり、有機半導体材料として高いポテンシャルを有することも明らかになったため、今後はフレキシブルディスプレイやIDタグといったさまざまなデバイスでの応用が期待される。

また今回の発見により、簡素な分子構造を有する材料分子であっても、結晶構造中での分子配列を分子設計により適切に制御することで、従来の有機半導体に勝る特性を有する材料を開発できることが明らかになった。

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