水熱法により300℃以下でニオブ酸カリウムナトリウムの膜を作製することに成功――大面積/3Dセンサーや自立型センサーの開発に寄与 東工大ら

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

東京工業大学は2020年10月13日、同大学および上智大学、東北大学、大阪府立大学らの研究チームが、鉛を含まない圧電体であるニオブ酸カリウムナトリウム((K,Na)NbO3)の膜を、水熱法により300℃以下で作製することに成功したと発表した。

圧電体は、力を加えると電気を生じる性質(正圧電効果)や電気を加えると力を生じる性質(逆圧電効果)を有しており、圧力センサーや加速度センサー、身の周りにある振動で発電するエナジーハーベスタでの実用化に向けた開発が進められている。

従来の圧電体では、絶縁体に高電圧を加える「分極処理」が不可欠であったが、特に圧電体が大面積になるにしたがって電気的な破壊(絶縁破壊)が増加することが課題となっていた。

また、振動発電などでは、金属板のようなしなやかな基材上にある程度の厚さがある膜形状で作製することが求められるが、通常の膜作製法では600℃以上の高温プロセスが必要となる。しかし、その後の冷却過程において膜と基材の縮み方が異なることから、厚膜の場合は割れてしまうという点も課題となっていた。

今回の研究では、高圧鍋を用いた水熱法により、圧電体の1つであるニオブ酸カリウムナトリウムの膜を従来より低い240℃で作製することに成功した。

この膜は、作製された段階でプラスとマイナスの方向が揃っており、分極処理が不要となる。絶縁破壊の問題が生じないことにより、大面積化が容易となっている。また、作製温度が低いため、膜厚を最大22μmにしても膜が割れる現象が観察されず、割れない厚膜の作製が可能となった。

冒頭の画像は、作製した膜の表面の光学顕微鏡写真である。左の240℃で作製したままの膜は厚くても割れなどがないのに比べて、右の作製後に600℃で熱処理した膜の表面には割れが多く観察される。

また、得られた膜の圧電定数(e31,f)は、従来のニオブ酸カリウムナトリウムでの報告値とほぼ同じ値が得られており、その値は膜を厚くしても最大22μmまで安定していることも確認された。

さらに、今回作製された膜は高い圧電特性と低い誘電率をともに有しており、センサーの性能評価に用いられるセンサー性能定数(g31)は、酸化物材料の圧電体で最も高い0.073Vm/Nとなった。窒化物材料で世界最高値であるSc置換窒化アルミニウム(AlN)の値に匹敵する値となっている。

Sc置換窒化アルミニウムは誘電率が低く、センサーで用いるにはノイズレベルが高いため、センサー回路の設計が難しい。一方で、今回用いられたニオブ酸カリウムナトリウムは、Sc置換窒化アルミニウムの約10倍の誘電率を有しており、実質的に最も高いセンサー性能に達したと考えられる。

今回の研究成果は、大面積や3次元などの複雑な構造のセンサーや、自身で発電可能な自立型センサーの実現に寄与することが期待される。

関連リンク

プレスリリース

関連記事

アーカイブ

fabcross
meitec
next
メルマガ登録
ページ上部へ戻る