バイオフィルムを除去して殺菌する、お茶の芽から作った生体適合性マイクロボット「T-Budbot」

インド工科大学の研究チームは、茶芽を使ってバイオフィルムを除去、断片化し内部の細菌を殺す「T-Budbot」と呼ばれる磁気駆動方式マイクロボットを作製した。研究成果は、『ACS Applied Materials & Interfaces』誌に2020年8月31日付で公開されている。

微生物が集合してぬるぬるとした粘液層を形成するバイオフィルムは、カテーテル、人工関節、ペースメーカーなど埋込型医療機器の表面にも形成され、院内感染の原因となる。バイオフィルムを形成した細菌は抗生物質に対する耐性が高く、治癒を遅らせたり、重篤な合併症を引き起こしたりする可能性もある。

研究チームは、このバイオフィルムを破壊し除去する生体適合性のあるマイクロボットの材料として、葉が多孔質で毒性がなく安価で生分解性のある茶(学名:Camellia sinensis)の芽に着目した。茶芽には、抗菌作用を持つポリフェノールも含まれている。

茶芽を粉砕して多孔性の微粒子にした後、微粒子の表面をマグネタイトナノ粒子でコーティングし、磁力で制御できるようにした。また、多孔質構造体の中には抗生物質であるシプロフロキサシンを充填した。薬剤の放出は、T-Budbotの周囲のpHを調整することで制御でき、細菌感染症で発生する酸性環境下で薬物の放出が促進される。

T-Budbotを細菌のバイオフィルムに加えて磁力で操縦するin vitro(試験管内)の実験で、T-Budbotはバイオフィルムを貫通して断片化し、細菌を死滅させ、残骸を除去することに成功した。

今回の研究は、治療を目的とした有害バイオフィルムの除去に、植物由来の磁気駆動方式マイクロボットを利用するという概念を初めて実証したものであり、人体のバイオフィルムに適用するにはさらなる研究が必要だと、研究チームは述べている。

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